沿革
最終更新日: 2023-11-07
沿革
2023-11 | 第12回国際シンポジウム | 詳細 |
2022-11 | 第11回国際シンポジウム | 詳細 |
2021-11 | 第10回国際シンポジウム | 詳細 |
2021-01 | 『実践する総合生存学』(京都大学学術出版会)の刊行 | 詳細 |
2020-11 | 第9回国際シンポジウム | 詳細 |
2020-09 | 総合生存学館ソーシャルイノベーションセンターの発足 | 詳細 |
2019-11 | 第8回国際シンポジウム | 詳細 |
2018-12 | 第7回国際シンポジウム | 詳細 |
2018-03 | 『HUMAN SURVIVABILITY STUDIES -A NEW PARADIGM FOR SOLVING GLOBAL ISSUES-』(京都大学学術出版会)の刊行 | 詳細 |
2017-12 | 第6回国際シンポジウム | 詳細 |
2017-08 | 第1回思修館遊聞会(同窓会) | 詳細 |
2016-11 | 第5回国際シンポジウム | 詳細 |
2015-11 | 第4回国際シンポジウム | 詳細 |
2015-07 | 『総合生存学-グローバルリーダのために-』(京都大学学術出版会)の刊行 | 詳細 |
2015-05 | 思修館による社会人のためのエグゼクティブ教育プログラム KUELPs (Kyoto University Executive Leadership Program)が開講 |
kuELPs HP |
2015-04 | NHK-ETVテレビ放映 | 詳細 |
2014-12 | 東一条館竣工 | |
2014-11 | 第3回国際シンポジウム | 詳細 |
2014-09 | 第二研修施設「船哲房」除幕式 | 詳細 |
2014-06 | 船哲房竣工 | |
2013-11 | 第2回国際シンポジウム | 詳細 |
2013-07 | 第一研修施設「廣志房」除幕式 | 京大HP掲載 |
2013-04 | 大学院総合生存学館の設置 | |
2013-03 | 廣志房竣工 | |
2013-03 | 第1回国際シンポジウム | 詳細 |
2012-10 | プログラム1期生の採用 | |
2011-11 | 博士課程教育リーディングプログラム採択 | |
2010-10 | 大学院思修館設置準備室の起ち上げ |
対談(山極壽一総長と寶馨学館長) ※所属・役職・内容は制作当時(2018年)のものです。
2013年の設立から6年、総合生存学館(思修館)に期待すること。
寶馨学館長(以下、学館長):
平成23年度に採択された博士課程教育リーディングプログラム「京都大学大学院思修館」も7年間のプロジェクト期間を2018年3月で終え、その3年目にこのプログラムを実施する研究科として新たに設置されました京都大学大学院総合生存学館(思修館)は6年目に入りました。総長として見ておられて率直な感想をお願いいたします。
山極壽一総長(以下、総長):
最初、総合生存学館ができたとき、文部科学省博士課程教育リーディングプログラムの趣旨に従って、世界で、あるいは社会で活躍できるリーダーを育てよう、研究者ではなくて、実学の中でいかに学問の力を発揮できる人材を育てるかということを目指していました。そういう意味で、実社会で活躍されている方々を講師でお招きして、学生がカレッジ形式で泊まり込んで、メンターが一緒になって熟議をやって、早いうちに実社会での活躍できる能力を高めるために海外武者修行やるという、従来の修士、博士課程とは非常に違ったカリキュラムを組んだわけですよね。実際やってみると優秀な学生が入ってきて、また、博士の学位を今年の3月に5人に授与して、やっと軌道に乗り始めたのかなという気がします。
今後は、このリーディング大学院構想や総合生存学館の強みである実学というものを教養、基礎として学べるようなシステムを大学院だけで完結するのではなく、京都大学のほかの部局の学生たちにも広げ、更には産業界や社会に開かれた大学になってほしいと思っています。
学館長:
総合生存学館の八思科目も大学の共通科目として登録をしておりまして、ようやくその内容や魅力が学内に発信できてきているのかなと思っています。それから社会との関係で言いますと、産学連携ということで思修館を窓口として、企業の人たちがもっともっと来やすくなるようにして、大学の知を企業に還元するというところも、十分やりきれておりませんので、その辺は今後の課題として、ぜひ進めていきたいなと思っています。
総合生存学というコンセプトについて。
学館長:
今、様々な社会的なリスクがありますよね。災害もそのうちの一つですけど、もっと別の経済的なリスクもあれば、健康的なリスクもありますし、生態系を破壊するようなリスクもあります。そのようないろんなリスクを、生存学という以上は、問題として捉え解決していくようなかたちでの人材育成なり教育なり、総合生存学という枠組で考えていきたいと思うのです。従来、各リスクはそれぞれの国の中で何とか対処してきました。ところが今はグローバルリスクといわれるように国境を越えて、お互いに共通したリスクもたくさんあります。ですから海外へ行って、そういったリスクを学んできたり、どうやって解決するかということを知ってきたりしたときに、それを日本でも使えるし、逆に、日本のリスクの対処の仕方が海外でも役に立つかもしれません。総合生存学の方向性の一つとしてこうした考え方があるのではと思っています。
総長:
はい、恐らくいろんな学問、経済学にしても、政治学にしても、生物学にしても、そういった学問の中でヒューマンサバイバビリティというものを、いかに実践的に考えていくか。そういうエッセンスをここで集約して幅の広い教養と、その応用を目指す人間学を統一的に推進していくというかたちを取れば総合生存学がより認知されやすいと思います。
自ら海外の人たちを引きつける素養を身につける。
総長:
ユネスコや国連のような国際機関や海外NGOにしても、政府機関にしても、英語でロビーワークができる、あるいは交渉ができる人材は、日本でものすごく不足しています。英語はできるけど、本当に学問的な基礎のうえで渡り合える人は極めて少ない。
海外インターンシップを通して思修館では、国連機関の職員や関係者達、あるいはJICAで派遣された専門家の中に混じっていろんな実務を経験したっていう人たちもたくさんいるわけだけど、そういう人材が今、日本にはますます必要なんですよ。国際競争力を強化するっていうけれども、学問的な国際協力だけではなくて、いかに政策面や、企画立案面で日本人がその中に入ってできるかという、そういうことをやはり大学という知の拠点は、作り出さなくてはいけないと思うのです。だからそういうことをまず思修館を含め大学全体として第1期、第2期で目指したっていうのは、非常に私はすばらしいことだと思いますし、実際そういう人たちが育ってきました。今後はそれをどういう連携でつなげていけるかということが課題で、日本の外交政策へどんどん関与できるような人材を育成するために、思修館自身がいろいろな省庁や海外の国際機関と連携して人材交換を活発にしていってほしいと思います。
学館長:
思修館では八思の一環として茶道、華道、書道なども授業に取り入れています。学生はそれを自分のものとして、作法も身につけ、それをまた外国人にも説明できるというような能力があれば、グローバルなフィールドや場面での様々なロビー活動でも、芸術面で相手と渡り合える素養として役に立つと思うんですね。
総長:
学館長のおっしゃるとおり、思修館の学生はそういう日本の文化、文芸をこの京都で自分のものとして、歴史を理解し作法も身につけ、学問的な、専門的な知識のみではなく、自ら海外の人たちを引きつけるという能力を持って、海外に出ていけるということは強みだと思います。
学位を取って、世界に出て活躍するという気概を持って。
学館長:
最後に学生へメッセージをお願いします。
総長:
総合生存学館というのは、京都大学が作った非常に新しい窓口だと思うのです。チャレンジングな場なのです。その精神を学生は十分に受け止めて、チャレンジングなことをやらないといけないと思うのです。
この思修館というのは5年一貫教育で、もちろん研究畑に残ることも可能だけども、社会に出て新しい博士の学位を能力を見せるんだ、という気概を持ってあたってほしいと思います。学位を取ったことが研究者になる道ではなくて、社会に出て、世界に出て活躍するんだ、大学の知を社会に還元するんだっていう気概を持たなくちゃいけない。そういう意味では、この総合生存学館は、そういうマインドを作る、世界にそのマインドを発信し実践する最初の場所だと僕は思うんですね。ぜひ、学生にはその気概を持ってやってほしいと思います。
学館長:
ありがとうございます。リーディング大学院は専門性に加えて、人間的魅力と社会的俯瞰力をもつ人材の育成ということで始まったわけですけども、単に学位を取ったというだけじゃなくて、人間味あふれる、人間性豊かなドクターを輩出していきたいのです。学生諸君には、思修館のカリキュラムの中でそういう幅広い知識を持って社会的俯瞰力があるようなドクターを目指して欲しいと思います。われわれ教員も一層努力して参りたいと存じます。
本日は、お忙しいところ、大変有り難うございました。
対談(山極壽一総長と川井秀一初代学館長) ※所属・役職・内容は制作当時(2015年)のものです。
リーダーシップ教育につながる八思
リーダーはさまざまな人と付き合う必要があります。異文化、異分野のそれぞれのひとたちを納得させなくてはならない。
そのためには、社会の仕組みがどうできているかということはもちろん、それぞれの分野でどんな人がどういう情熱で働いているのかを理解しておく必要があるということです。だから机上の学問だけではなくて実際にさまざまな人たちの現場に行って自らの身体でそれを感じるということが必要です。私自身が様々な世界を渡ってきて、「新しいことを提案して現場の人たちを納得させるには、さまざまな知識を総動員して、自分がやりたいことを熱意を持って伝える、それが相手に伝わらなければ新しい仕事はできない。」と思ったからです。そのためには語学も必要だし、自分の思いを相手の言葉で描き相手を感動させなくてはいけない。そのためには自分は明確なストーリーをもっていることが必要だし、そのストーリーは、相手のわかる言葉で、相手のわかる分野の知識でもって語らなければならない、それがリーダーの素質だと思います。さまざまな学問領域を修得し、さまざまな分野の教養を頭に収めておくための「八思」に期待します。
京都特有の文明論的意義をみつめる
もともとインスパイアされるという場所である京都には今五千万人の観光客が来ると言われていますけれども、その人たちがただ通過しているだけではなく、さまざまな分野やさまざまな国の人たちが出会って、異なる知識を交換させながら、京都を中心として何か新しいものが育っていく。京都大学という最先端の学問をやっている人たちがその中心になる。
それはおこがましいようですけれど、世界にとっては、とても素晴らしいことじゃないかと私は思っています。
京都はね。世界の中のどの都市よりも、自分が世界一だと思っている人の密度が高い所だと思うんです。もちろん芸術家の方々もそうですし、職人の方も、それから市井に生きる人たちもそうですね。それは、京都という歴史の厚みの中で、自分を見つめることができるからだと思います。「日本の中で」というよりも、「世界の中で」ということが、直接繋がっている。こういう技術を持っている人は世界に俺しかいないんだ。私しかいないんだ。そんな誇りの中で暮らしていますから。それが一つの矜持になって、非常に高度で質の高いものが伝えられるのだろうと思いますね。
境目を超えて学問領域を俯瞰する
「新しさ」、つまり創造性というのは、一つの学問領域の中で認められないものもあると思うのです。これまでの学問は、それぞれ境目があって、その中で「深める」ということによって、「新しさ」を作り出してきたわけだけれども、思修館は深堀ではなくて、色々な学問を合わせた中に新しい発想があるわけです。新しい試みが提案できるし、自分の学問として提出することができる。
いうなれば挑戦なんですよね。ただ、その成果がどう問われるか。実践ですから。実践の学問としてどういう風に社会に通用するか、その真価が問われると思います。
さまざまな学問領域を俯瞰しながら、そこにいろんな形で足を入れながら、新しいことを考える。
今まではその学問の中で、新しい物事を創造してきたわけですけれども、それをつなげることによって、どれだけ新しい創造的な物ができるのか、ということだと思いますね。それを今の社会は必要としている。私はそう思います。
初代学館長メッセージ
京都大学大学院総合生存学館は平成25年度に新たに設置された大学院です。総合生存学館は文科省博士課程教育リーディングプログラム「京都大学大学院思修館(平成23年度)」の実施組織であり、そのため「思修館」を通称にしています。
現代社会は、人、もの、情報のグローバル化により否応なくわれわれを国際社会に巻き込み、異文化と格差のなかでの舵取りを迫っています。地域紛争、経済危機、人口爆発、環境汚染、感染症など、われわれが直面している課題は広域化、複合化し、個別専門分野だけの対応では限界のあるものばかりです。
思修館の最も大事なミッションのひとつは、地域や国家で、あるいは国際社会において、上記のような課題に取り組む人材、人類社会の生存と未来開拓を担うリーダーを育成することです。
思修館は、社会の現場で実践し、課題の解決に向けて邁進しようとする未来のリーダーの「鍛錬の場」です。そのため、思修館では学力は言うに及ばず、思考力 と実践力を鍛え、社会性や国際理解を醸成して、様々な課題に対して柔軟に立ち向かえる俯瞰力と総合力を養う教育を行います。八思、熟議、
海外武者修行やインターンシップなどの幅広い、特徴あるカリキュラムを用意しましたので、是非、本ホームページを参照ください。
学生の皆さんは、それぞれの専門知識・経験と共に、人文・社会科学系から自然科学系に至る幅広い学識を獲得し、その知識を現場で応用できる力を養い、修了後には現代世界が直面している課題、そして近未来に起こるであろう困難な社会課題に挑戦し、社会を変える原動力となることを期待します。
このような人材育成の基盤になるのは、人間力であり、堅固な意思や志、夢かと思います。京都大学の「自由の学風」の礎を創った初代総長木下廣次(きのした ひろじ)先生は「自重自敬」という言葉を残しておられます。「自分の頭で主体的に考え、行動する」、「信頼するに足る自分を作り上げる」ことが大事です。 自らの大きな夢の実現に向けてこの五年間を最大限活用し、自分を高めて欲しいと思います。思修館には自重自敬の師として人文社会/理系の両分野にわたるユ ニークな教員が結集し、皆さんの大学院生活が人生において最も充実した意義ある時間となるよう全面的にサポートし、みなさんの夢の実現やキャリアパスの獲 得を応援します。
将来の日本、将来の世界を牽引するリーダーになる事にチャレンジしてみたい方には、是非この新大学院総合生存学館にトライして頂きたいと思います。非常に厳しい勉学も待っておりますが、それを乗り越えた人はきっと素晴らしい世界のリーダーへの門戸が開かれると確信しています。
思修館の二つめのミッションは、「総合生存学」という新しい学術体系を創ることです。既存の分野を束ね、生存学を基にこれらを編み直し、社会実装するための実践的なケーススタディや思想・方法論を培う応用学、総合学としての総合生存学を創ることです。このため、産官学の協働のもとで理論と実践を融合する研究の推進を計っています。
以上のように、思修館は人類や社会・地球システムが抱える問題の本質を理解し、生存学に関わる総合的、実践的な知の体系を創ると共に、生存学を修得して次世代のリーダーを目指す若人を養成することにより社会に貢献したく思います。