京都大学大学院総合生存学館(思修館)

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教員コラム<清水美香特定准教授>

総合生存学館地球社会レジリエンス講座・特定准教授の清水美香です。前回のコラム/blog/2021/05/06/20210501 の続編という位置づけで本コラムお書きします。

前回もお書きしたように私は米国生活が長く、博士号取得後、米国東西センター(East-West Center)(ワシントンD.C.およびハワイ)において、グローバルリスク研究プロジェクトを共同チームで実施する経験を積み、またその間スウェーデンのストックホルム大学に招聘されアジアと欧州の災害リスクマネジメント比較研究を実施してきました。2013年米国より日本に帰国後、京都大学でレジリエンス研究を実施しています。

その当時からこれまでずっと私が研究活動の柱にしてきたことの1つに、日本の各地域・コミュニティとの交わりを大切にすること、または海外フィールドに行って現場に立つことが挙げられます。そうした経験を通して、気候変動の影響による自然の劣化や災害を中心としてリスクが益々複合化していく中で、影響や被害をできるだけ小さくしながら発展し続けるためのアプローチを追及してきました。さらに、現代リスク社会が抱える不確実性の存在を重視し、科学的データや情報における不確実性が、人間社会における不確実性にどのように関わっているのかを斟酌しながら、そうした逆境を乗り越え、発展し続ける社会、つまりレジリエント社会の構築のための枠組みを示してきました。その成果がNexus of Resilience and Public Policy in a Modern Risk Society(2019年, Shimizu & Clark, Springer, 2019)に示されています。ここまでが、私のレジリエンス研究の第一章と言えるでしょう。

その後レジリエンス研究の第二章に突入し、持続可能な社会、SDGsに関わる各地域・社会の抱える課題に向き合い、自然システム(生態系)-人間社会システムの関係性を重視し、自然と共生しながら次世代に繋ぐ持続可能な社会に向けて、関連の問題群に適用するレジリエンスアプローチ手法(Shimizu, 2022)を開発してきました。その間も、様々な地域を訪れ、現地での対話を大切にしてきました。そのレジリエンスアプローチを通して、教育現場で、研究現場で、企業で、レジリエンスアプローチに基づいてデザイン、設計したワークショップを数多く実施してきました。従来実践されてきたアプローチを分野横断的または俯瞰的な視点から見直し、どこの何が見落とされているか、隙間はどこにあるかを見つけ出し、そこにどのようなデザインを施して問題解決方向に仕向けるかを明らかにして、人間社会の変容を引き出し、自然と共生する持続可能な社会づくりを目指しています。

そんな経験をたくさん携えて、今年は3冊本を書きました(1冊未だ書いている途中ですが)。1冊は、A Resilience Approach to Acceleration of Sustainable Development Goals (Mika Shimizu, Ed., Springer, 2022)、2冊目は、『レジリエンス――森・風景・地域・人をよみがえらせる力」【生存科学叢書】(日本評論社、2023年3月発行予定)、3冊目は、、お楽しみに。

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