池田裕一教授
 

ブロックチェーンの国際会議BCK21 の様子

こんにちは。池田裕一 (いけだ ゆういち)です。2012年5月の京都大学大学院総合生存学館(思修館)の設立準備から,学生と共に分野横断的な研究教育に取り組んでいます。
 
簡単に経歴を説明します。1989年,米国ブルックヘブン国立研究所での相対論的重イオン原子核衝突によるクォークグルーオンプラズマ生成(QCD 相転移,リトルバンとも呼ばれる)の研究プロジェクトにおける原子核物理学の研究で,九州大学から理学博士を授与されました。同年,東京大学原子核研究所で,ポスドク(日本学術振興会特別研究員PD)として高エネルギー物理学の研究に従事。1990年から2010年まで,研究員,主任研究員として日立製作所でスーパーコンピューティングによるさまざまな技術上・経営上の課題解決に取り組みました。この間,1997年にカリフォルニア大学バークレー校で客員研究員としてプラズマ計算物理学を,2010年に国際エネルギー機関IEA でスマートグリッドを含むエネルギー政策を研究しました。2011年に東京大学生産技術研究所准教授,2012 年以降は京都大学の教授として教鞭をとっています。現在の研究テーマは,データ科学,ネットワーク科学,計算科学を用いたグローバル問題(地球規模の社会課題)の分野横断的研究です。
 
私の主催するネットワーク社会研究会では,総合生存学館の特徴である複合型研究会の構想・設立から,ネットワーク科学とデータ科学が解き明かすグローバル問題についての学術的な成果をもとに,エビデンスに基づく政策提言を国際機関にて行ってきました(https://www.youtube.com/watch?v=OAGS-UhHcMg)。グローバリゼーションは矛盾を内包しています。グローバリゼーションは国際的な経済的不平等を減少させ,新興国が先進国に追いつくことを可能にする一方で,一部の先進国では相対的な貧困を増加させています。国際的な不平等と国内的な不平等のトレードオフは,どのように解決されるべきなのでしょうか。多様性の尊重に関する国連の政策にも明記されているように,価値観の異なる人々の共存と繁栄のためには,グローバリゼーションによる文化的多様性の劣化を回避しなければなりません。グローバリゼーションが着実に進む中で文化の多様性を維持するためには,地域社会にどのような変化が求められるのでしょうか。
 
このような重要な問題に対処するために,ネットワーク社会研究会では,ビッグデータをネットワーク科学のアプローチで分析してグローバルなモノ・カネ・人の流れの相互依存関係の解明に取り組んでいます(https://www.gsais-nsrg.com/)。ネットワーク科学は,経済活動,インターネット,友人関係,さらには遺伝情報までもが対象となる分野横断研究の代表的な手法です。モノの流れについては,貿易ネットワーク・付加価値ネットワーク・資源の流れとストックに関する研究を,カネの流れについては,所有権ネットワーク・国際利益移転・移民による国際送金などの研究を,人の流れについては,移民の同化・難民の医療サービスなどの研究を行っています。これらの研究から得られた世界の分断構造に関する知識をもとに,ビッグデータ分析を用いた社会的孤立指数の開発も進めていきます。
 
新型コロナウイルス感染症の流行が,2020年の春から1年以上も続いています。この問題を通して,感染症は医療だけの問題ではなく,それを支える社会システムも同時に考慮しなければならないことを多くの人が痛感しました。感染症を含む様々なグローバル問題の解決には,「個別学問におけるアカデミックな問いに答えるための研究」では不十分であり,「グローバル問題を解決するための文理の枠を超えた分野横断型研とその実践」,すなわち総合生存学が必要です。単にアカデミックな研究成果の社会への発信にとどまらず,小さいスケールでよいので,実際に研究成果を社会に実装してみるということが必要なのではないか?このような問題意識に基づいて,2020年9月に,総合生存学館ソーシャルイノベーションセンターを設立しました(https://innovationkyoto.org/)。ソーシャルイノベーションセンターでは,京都大学の他研究科や研究所の教員との連携と協働のもとで,複合的なグローバル問題についての研究成果の社会実装を行います。私は,多くの学生と共に,ブロックチェーン技術を活用して,中央集権的な世界を脱却して個と個がフラットに繋がるオープンな分散型の世界への転換の早期実現に取り組みます。オープンな分散型の世界でのグローバル問題の解決を目指して,これまで十分に注力できていなかった総合生存学の社会実装に挑戦していきます。
 
次の世代を担い,まさにこれからの世の中を変えて行こうと考えている若者,特に,
・従来の大学院は退屈だ,物足りないと感じている学生
・細分化された学問が生み出せる価値に限界を感じている学生
・狭い専門分野の研究者にはなりたくないと思っている学生
・学術的な世界にこだわらず,グローバル問題の解決に繫がる研究をしたい学生
からの,参加をお待ちしています。ご関心のある学生は私までお知らせください。