京都大学大学院総合生存学館(思修館)

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研究成果 SARS-CoV-2に感染した国内線旅客の検出における空港での発熱スクリーニングの評価、2020-2022年、沖縄県

水本憲治 総合生存学館(思修館)准教授らの研究グループは、2020年-2021年に沖縄県内の9空港で実施された発熱スクリーニングについて後方視的疫学分析を行いました。
2020年5月から2021年3月までに沖縄県内の空港を通過した人数は409万人と報告されました。同期間中、少なくとも122人のCOVID-19感染者が沖縄の空港に到着したが、空港で検出された疑い例(*1)は10例のみであったため、捕捉率(*2)は最大8.2%(95%CI:4.00-14.56%)と推定されました。発熱スクリーニング率は0.0002%(95%CI:0.0003-0.0006%)(疑い例10人/到着旅客2,971,198人)でした。サーモグラフィで検出された乗客のうち、非接触体温計での体温測定の協力を得られなかった拒否率は0.70%(95%CI:0.19-1.78%)でした(4人/572人)。
本研究により、サーモグラフィによる空港スクリーニングだけではCOVID-19感染者の90%以上が見逃されていることが明らかになりました。このことは、サーモグラフィによるスクリーニングが国境/県境管理対策として有効でない可能性を示しています。また、約300万人の旅客をスクリーニングした結果、発熱症例がわずか10人しか検出されなかったことから、特に潜伏期間の長い無症候性感染を対象とした対策の導入の必要性を示唆しています。したがって、SARS-CoV-2と同様かそれ以上の病原体特性を持つ世界保健機関(WHO)の国際保健緊急事態(PHEIC)基準を満たす感染症流行時、特に医療資源の乏しい地方都市への渡航時には、他の対策、例えば搭乗前のRT-PCR検査が強く推奨されます。

*1: 疑い例:発熱を呈し、コロナ感染が疑われた方。
*2: 捕捉率は、空港での発熱スクリーニングによる疑い症例数に対する、空港スクリーニングを通過したであろうCOVID-19報告症例の割合と定義し、那覇空港に到着した旅客と、沖縄県が2020年5月から2021年3月までに収集したサーベイランスデータを用いて算出した。

査読有り
Takayama, Y., Xu, Y.S., Shimakawa, Y., Chowell, G., Kozuka, M., Omori, R., Matsuyama, R., Yamamoto, T., Mizumoto, K*. Assessment of fever screening at airports in detecting domestic passengers infected with SARS-CoV-2, 2020–2022, Okinawa prefecture, Japan. BMC Infect Dis 24, 542 (2024). https://doi.org/10.1186/s12879-024-09427-5
https://link.springer.com/article/10.1186/s12879-024-09427-5?utm_source=rct_congratemailt&utm_medium=email&utm_campaign=oa_20240530&utm_content=10.1186%2Fs12879-024-09427-5#citeas

その他の業績等
Google Scholar: Kenji Mizumoto
https://scholar.google.co.jp/citations?view_op=list_works&hl=ja&hl=ja&user=OW5PDVgAAAAJ&sortby=pubdate

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