京都大学大学院総合生存学館(思修館)

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教員コラム<土井隆雄特定教授>

私は、2020年4月より総合生存学館SIC有人宇宙学研究センターで宇宙木材研究室を主催しています。宇宙木材研究室は2つの活動をしています:
     1.宇宙木材プロジェクト
     2.有人宇宙学研究教育活動
宇宙木材プロジェクトは、宇宙での木材利用をめざして住友林業株式会社との共同研究を推進しています。樹木・木材は私たちが作れる唯一の再生可能資源です。宇宙で樹木・木材を使うことができるならば、宇宙で暮らすための資源をどこから調達すれば良いかという問題を解決することができます。さらに宇宙での木材利用はカーボンフリー活動を宇宙に広げることを可能にします。有人宇宙学研究教育活動は、宇宙で人類が恒久的に発展していくために何が必要なのかを探究すると同時に講義や実習を行っています。宇宙に人類が進出することは、人類の進化の一過程であると考えています。

宇宙木材プロジェクトでは、世界で初めての木造人工衛星1号機(LignoSat)を開発しています(図1)。LignoSatは10㎝の立方体で重さは約1kgです。ホオノキ構体を持ち、表面に貼られた太陽電池パネルによって作られた電気を使い、宇宙空間の真空・紫外線・原子状酸素などにより木材がどのように変化していくのかを調べます。2024年春の打上げを予定しています。京都大学初の人工衛星の誕生です。


図1 木造人工衛星1号機(LignoSat)エンジニアリングモデル(ホオノキ製)

また、火星での樹木の育成をめざして低圧下での樹木育成実験を行っています(図2)。火星は地球の約1%の大気を持ち、しかもほとんどが二酸化炭素です。樹木が光合成によって成長するために必要な光と二酸化炭素はあるので、あと水があれば火星で森を作れるのではないかと考えています。宇宙木材プロジェクトは京都大学学部生・大学院生によって推進されています(図3)。


図2 低圧下における樹木育成実験装置

 


図3 宇宙木材研究室学生チーム(2023年6月)京都大学吉田キャンパス時計台前にて

有人宇宙学研究教育活動では、人類の宇宙展開を記述する学問:有人宇宙学を創出するための研究教育活動を行っています。有人宇宙学は人間-時間-宇宙を繋ぐ学問であり、4つの進化過程:宇宙の進化、生命の進化、文明の進化、宇宙開発の進化を記述する学問です(図4)。前期は、学部生向けに短期宇宙ミッションを模擬したILAS有人宇宙学実習を行い、学生の皆さんに宇宙で必要となるチームワークを経験してもらっています。後期は、大学院生向けに有人宇宙学講義・演習を行います。学生は宇宙班、月班、火星班、惑星・月班に分かれて宇宙に150人の人々が暮らす社会を創ります。演習結果は宇宙ユニットシンポジウムで発表し、さらに研究を進めた学生班は日本航空宇宙学会が主催する宇宙科学技術連合講演会で発表してもらっています。


図4 有人宇宙学

宇宙をめざす諸君、来たれ!SIC有人宇宙学研究センターへ!大いに宇宙への夢を語り合い、実現して行こう!

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