京都大学大学院総合生存学館(思修館)

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教員コラム<ディミター・ヤルナゾフ教授>



ベトナムでの国際学会
(修了生の羽尾一樹さんと一緒に)


ケニアでの現地調査
(修了生のチャールズ・ボリコさんと一緒に)


インドネシアでの現地調査
(修了生のアレクサンダー・キーリーさんと一緒に)


ミャンマーでの現地調査
(修了生のアレクサンダー・キーリーさんと一緒に)


Dimiter Ialnazov (ディミター・ヤルナゾフ) です。2022年4月〜9月にサバティカル(研究専念期間)のため、ブルガリアのソフィア市に滞在しています。サバティカル中に研究しているテーマはポーランドとブルガリアにおける石炭火力のフェーズアウト(段階的廃止)ですが、2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの侵攻の影響で石炭火力発電や原子力発電をめぐるEU(欧州連合)加盟国の考え方が大きく変化しています。具体的に、ロシア産天然ガスの輸入依存から脱却したいEU加盟国において、石炭火力発電や原子力発電を維持しようとする動きが見られます。なぜなら、比較的安価な国内エネルギーの供給を確保して2022年〜2023年の冬を乗り切りたいという思いが強いからです。

石炭火力を含む化石燃料による発電を維持しようとする動きは単なる短期的な対策として考えがちですが、私は長期的な影響もあるのではないかと懸念しています。私は新興国及び途上国における再生可能なエネルギーへの転換について研究を行なっていますが、前述の動きは今後の太陽光発電や風力発電の普及促進を妨げることになるのではないかと考えています。2022年2月24日後の世界では、(1)脱炭素化(温室効果ガス排出量を実質ゼロにすること)、(2)エネルギー安全保障(エネルギーの輸入依存度を減らすこと)、及び(3) 安価なエネルギーの供給、といった三つの要素がより複雑に絡み合うことになるでしょう。今後は、その三つの要素の関係性がどのように変化していくかを現地調査や各国のケース・スタディーを用いて研究していきたいと思います。

私が指導する学生は持続可能な経済研究会 (Sustainable Economy Research Group)に参加しています。持続可能な経済研究会は総合生存学館の複合型研究会の一つです。月に二回ゼミのような形で開催しています。参加する学生の研究テーマは多岐に渡りますが、以下の点は参加する学生の共通の関心事項です。
(1) リサーチ・デザインや研究手法
 総合生存学館では、自身の研究を推進するにあたって、自身の専門分野以外の専門分野の視点を取り入れることが必要です。参加する学生の中に、経済経営を専門にしている学生が多いですが、法学部や工学部出身の学生もいます。また、学館では研究手法として定量的手法と定性的手法を組み合わせることは推奨されていますので、教員や先輩の学生が使っている研究手法から色々学ぶことができます。
(2) 持続可能な開発目標 (SDGs)の達成に係る課題解決
 総合生存学館では、学生の研究テーマは特定の持続可能な開発目標 (SDGs)の達成とつながっています。現在、持続可能な経済研究会に参加する学生の研究はSDGs 1(貧困), 7(エネルギー), 9(スタートアップ企業), 11(持続可能な都市), 12(環境経営), 13(気候変動対策)における課題の解決を目指しています。また、地球規模や国のレベルでの取り組みだけではなくて、企業がどのように持続可能な開発目標(SDGs)の達成に取り組んでいるのかについても持続可能な経済研究会参加者のもう一つの関心事項です。例えば、2022年3月に持続可能な経済研究会に参加する教員と学生3名が総合生存学館と産学連携講座を推進しているJX金属株式会社の東京本社において、同社との共同ワークショップを開催しました。同社が進めるCO₂ネットゼロの目標達成に向けた社内検討チーム(カーボンフリープロジェクト)のメンバー、および同社のシンクタンクであるJX金属戦略技研株式会社社員と一緒に「脱炭素化の課題と解決策」についてアカデミアの視点と企業の視点を交えて活発な議論を行いました。

月二回のゼミの他に、年に二回持続可能な経済研究会ワークショップを開催しています。これまでに開催したワークショップの動画を以下のYouTubeチャンネルからご覧いただけます。今後開催するワークショップはオンラインでも会場でも参加可能ですので、関心をお持ちの方は、私までお知らせください。
https://www.youtube.com/channel/UCb3kbi26FpLj0CBviV6sW_A/videos

さらに、エネルギー問題だけではなくて、政治経済学、SDGsにおける課題解決、新興国や途上国の開発問題に関心をお持ちで将来アカデミア、国際機関、または企業で活躍したい学生を歓迎いたしますので、是非連絡をください。

京都大学大学院 総合生存学館

〒606-8306
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TEL 075-762-2001 / FAX 075-762-2277
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