思えばずっと、水に関係することばかりやってきた。しかし実は、大学時代、水は大嫌いだった。当時やりたかったのは都市計画。しかし結果的に一生涯やることになる、水の研究に没頭した。「本当に自分がやりたかったのは何だったのか?」という問いに対する回答を得るために、大学院合格とともにブラジルに渡る。「水」(当時はダムと河川)の研究でサンパウロ大学で修士号をとり、京都大学に戻り、生まれてからずっと一緒だった「琵琶湖」の研究にて博士号((工学)環境地球工学)を修得。当時の研究の軸は南米と水資源。しかし3.11のあとは福島第一原発事故の影響評価のため現地調査を続けた。
 
大学院総合生存学館の教員となり、それまでやっていた水環境・水資源の研究、あるいは国際協力の仕事からあえて少し距離をおいて、「宇宙」に飛び出すことを試みた。もちろん、最初からいきなり飛び出せるわけではなく、ILASセミナー「ハビタブル・アース」を履修している学部生たちと一緒に、太陽系外惑星データベースを作り始めた。それが土井隆雄宇宙飛行士(現・総合生存学館特定教授)、理学部宇宙物理学教室の佐々木貴教助教らとともに2016年に一般公開してから、いまやわが研究の一つの柱となっている。2019年には、このExokyotoをベースにした研究論文を公表し、世界で初めて太陽系外惑星における放射線被ばくの定量化を行った。太陽系外惑星のハビタビリティーの研究に一つの大きな道を開くことができたのではないだろうか。
 
太陽系外惑星データベース Exokyoto
http://www.exoplanetkyoto.org
 
生命が居住可能な系外惑星へのスーパーフレアの影響を算出 -ハビタブル惑星における宇宙線被ばくの定量化に成功-
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2019-07-16
 
現在も、理学部宇宙物理学教室の仲間、そしてNASA/GSFCの共同研究者らとの研究を進めている。
 
さて、水に関する研究では、それまでは船からの観測ばかりやっていたが、2018年から水中・特に潜水(ダイビング)による沿岸海洋の観測を始める。リモートセンシングによる沈水植物の分類からはじまり、大学院生の岡村森氏らとダイビングにより撮影された水中生物の画像判別の研究を始める。これにより、「水面」からしか見たことなかった「水の中」の景色の多彩な生物を明らかにする。
 
3.11以来ずっと、放射性物質と水の研究をやってきたが、それがこういう形で実を結ぶ。「宇宙と海」という二つを結びつける研究。もちろんそこには「(宇宙)放射線との戦い」というテーマがある。いままで誰も叫ばなかったこの組み合わせが、どうやら宇宙に進出する上でキーになるという結論を抱いている。今年度より始まったSIC有人宇宙学研究センター(ソーシャルイノベーションセンター有人宇宙学研究領域)においては、様々な専門家の叡智を結集し、新しい研究を進めてゆく。
 
参考
 
リモートセンシングによる沈水植物判別
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2017-12-04
 
人間の活動が河川の環境修復を促進することを解明 -福島原発事故後の河川放射性物質長期モニタリング結果から-
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2019-10-08-0
 
SIC有人宇宙学研究センター(ソーシャルイノベーションセンター有人宇宙学研究領域)
https://space.innovationkyoto.org
 
ダイビング調査動画・屋久島
https://www.youtube.com/channel/UCqlQjfluygFcXyyIicXMpgw


 
ダイビング調査動画・田辺湾


動画編集 木村なみ