新刊『実践する総合生存学』について
 
京都大学総合生存学研究会(著)
京都大学学術出版会 2020年近刊
ISBN 978-4-8140-0296-2
 
「まえがき」より抜粋
 
本書に書かれているのは,主に研究成果として見える「結果」にちかい部分に過ぎない。読者から見えるのは,海に浮かぶ氷山の上の部分だけである。しかし,その下には,とてつもなく壮大なストーリー,大きく感情が突き動かされたこと,自分が正しいと考えていた価値観を根底から覆された経験が,潜んでいる。各章を読む際には,研究結果の裏にあるかもしれないドラマを想像しながら読んでいただけたら幸いである。
 本書の想定する読者は,次の世代を担い,まさにこれからの世の中を変えて行こうと考えている若者たちである。特に,
・従来の大学院は退屈だ,物足りないと感じている学生
・細分化された学問が生み出せる価値に限界を感じている学生
・狭い専門分野の研究者にはなりたくないと思っている学生
・学術的な世界にこだわらず,地球規模課題の解決に繋がる研究をしたい学生
にお勧めしたい。読んでいただいた後に後悔することはない内容だと自負している。
本書の編纂にあたっては,同じ志を共有する学生と教員が,苦しみ悩みながら,しかし楽しみながら,総合生存学を模索している生々しい姿を,カッコをつけずにさらけ出すことを,各執筆者にお願いした。その結果として,研究者によって総合生存学の学理の捉え方に多様性あるいは隔たりがあるように感じられるかもしれない。一見無責任なように見えるかもしれないが,本書の編纂ではそのような多様性を読者の皆さんにお伝えすることを意図した。
この本を手にした読者の皆さんには,これからの議論に参加していただき,共に新しいパラダイムを作り上げていくために,この先の章を読み進めていただきたい。