京都大学大学院総合生存学館(思修館)

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レポート 2017年度海外武者修行(6)

海外武者修行として、4年次に8ヶ月程度国際機関等へのインターンシップを実施しています。
世界視点での自らの位置取りと意識の改革に加えて、国際的リーダーとしての意識と責任感及び突破力を一体的に育成することを目的としています。
2017年度の海外武者修行から帰国した、学生を一人ずつご紹介します。

プロフィール
名 前  :川田 哲也
専 門  :総合生存学/環境工学
機関1  :UN Environment、Chemicals and Health branch
派遣国  :スイス、ジュネーブ
機関2  :International Water Association(IWA)
派遣国  :オランダ、ハーグ
派遣期間 :10か月(2017年5月22日~2018年3月23日)
 
海外武者修行はいかがでしたか?業務内容を詳しく教えてください。
スイスでは、SAICMと呼ばれる化学物質管理のプログラムに関わっていました。塗料に含まれる鉛の撲滅(LiP)や製品中の化学物質情報の公開(CiP)、環境残留性のある医薬品汚染(EPPP)などがプログラムの対象とされております。論文や報告書から基礎的なデータを収集することもあれば、専門家のミーティング時に場のセッティングをしたり、イベント用のポストカードをデザイン・作成したりするなど、多様な経験をさせてもらいました。
オランダでは、雨などの気象条件によって移行・拡散する汚染(diffuse pollution)の対策に関係する業務に関わっていました。具体的には、diffuse pollutionという現象が浄水場や下水処理場に対してどれくらい影響を与えているかを調べるために、「水関連施設」で勤務、もしくは関係する人を対象に、アンケート調査や聞き取り調査を実施しました。
 
印象に残っている出来事は何ですか?
スイスでの滞在中に開催された「水銀に関する水俣条約締約国会議」に関わったことです。日本に縁のある名前のついた数少ない条約であり、多くの日本人関係者(行政・産業界・NPO)が参加されていました。主催の事務局にインターンしていたので、裏方から国際会議の流れや調整を知ることができたことは私にとって貴重な経験になりました。また、多くの日本人が国際的な場で堂々と発言し、活躍している光景を目撃することができました。海外の地で活躍なさっている姿は、私にとって眩しく見えた以上に、私も同じような舞台に将来立ちたいと強く思えました。あの貴重な一週間は確かな灯火となって、これからの道を照らしてくれるだろうと確信しています。
 
海外武者修行に関してアピールしたいポイントを教えてください。
帰国子女や長期留学経験者でもない私にとって、海外で半年間以上過ごすことはチャレンジでした。言語や異文化への不安、見知らぬ土地で過ごすことへの漠然とした懸念。そして、新しいナニカへの期待。すべてが入り交ざった状態で、覚悟ができていないまま飛び出しました。濃厚な10ヶ月を終えて強く実感したのは、「私はどこでも私のままであり、私のままであり続ける」ということです。やり残してきた研究や眼前の仕事、健康面への心配が頭の中に常駐していましたが、それでもベースの部分の「私」は変わることなく、「私」のまま成長できました。支援いただいた大学院や日本社会への責任感をいだきながら日々を過ごし、そしてきちんと戻って来れたことは大きな自信になりました。自分一人では決して出会えなかったであろう人々に会い、かけがえのない経験を過ごせたのは「海外武者修行」のおかげです。
 
最後にメッセージをお願いします!
海外武者修行に行きさえすれば、自動的にもしくは勝手にスーパーマンになることはありません。ただ、果敢に挑戦することを許してくれる(もったいないほどの)「翼」をつけて、新しい世界に突き落としてくれます。その翼を使って、どう羽ばたき、どこまで自由に動き、そしてどんな風景を見るかが海外武者修行の肝だと思います。スーパーマンになるかイカロスになるか。すべて自らの自由と責任次第です。願わくは後輩たちが、精一杯に立ち向かいそして大きく成長して帰ってきますように。


▲UN Environmentでのオフィスにて。
 

▲水銀に関する水俣条約ポスター前にて。
 

▲水銀汚染の歴史を伝えるイベントにて。

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