総合生存学の理念
総合生存学館は、2013年4月、京都大学の第18番目の大学院として設立されました。
その目標は、現在社会が直面する数々の複合的・構造的な諸問題を解決するための実践的学問である「総合生存学」を確立し、この実践的学問を修め社会変革に取り組むグローバルリーダー人材を育成することです。
世界には、人類の生存を脅かす地球規模の諸課題があふれています。気候変動、自然災害、環境破壊、紛争、経済格差、パンデミック、少子高齢化など、枚挙にいとまがありません。こうした複合的な地球規模課題を克服するためには、これまでのような細分化された特定の専門分野でだけではなく、諸学問を幅広く探求し統合する「総合知」の方法論を確立する必要があります。そのためには、関係する諸々の学問体系の「知」を結び付け、編み直し、駆使して、複合的な社会課題の発掘・分析と定式化・構造化を行い、社会実装までの解決や思想・政策や方法を幅広く探究することが求められます。その研究・実践の過程において、高次元で総合的な文理融合能力及び俯瞰力が培われると期待されます。
総合生存学の概要
従来の大学院では、大学院生は、個別の学問分野を研究する教員のもとで、教員の研究室の一員として、教員の研究テーマに近いテーマを研究することによって、その学問分野の発展に寄与してきました。このような方法が有効であることは、これまでの膨大な研究成果によって実証されています。
しかしながら、上述のとおり、近年、様々なグローバル問題に代表されるような、個別の学問分野では対応が難しい複合的な問題が顕在化してきたことを踏まえ、新しい複合的な問題に興味を持つ学生が自ら研究テーマを提案して、異なる学問分野を研究する複数の教員との協働によって研究を遂行して、その研究成果を社会に実装する新しい学問を提唱しました。
総合生存学は、地球や生物の歴史、人類史や文明史に学び、教訓を得て、人類と地球社会が生き延びる方策を模索する学術であり、個人から地域、国家や地球システム・地球社会に至る様々なレベルにおいて現代社会が抱える複合化した課題に取り組み、その解決を目指す実践の学です。発展深化する一方で、細分化された個別学術の知識・智慧を生存知として実践の場で活かすために、これらの再編と再構成を通じて統合し、構造化するための学術体系です。