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エネルギー・グリーンフレーション(グリーン+インフレ)-カーボン市場の上昇がエネルギー価格高騰の一因-のメカニズムを解明
ゼロエミッション政策などグリーン化に伴う追加コストが、エネルギーなどの物価上昇圧力を高める可能性があります。そこで、この連関性の証拠を裏付ける定量分析が急務とされています。
金村 宗准教授は、エネルギー・グリーンフレーションを分析対象とし、カーボン価格の設定に焦点を当てたモデル化と実証分析を行いました。まず、買い圧力と価格の関係に基づき、エネルギーと炭素の価格相関・変動性に関する新たなモデルを提案しました。このモデルは、グリーンフレーションがコストプッシュ型とデマンドプル型の二つの経路で現れる構造を有しています。EUA(欧州排出枠)、ブレント原油、ARA石炭、NBP天然ガスの価格を用いた実証分析の結果、COVID-19前後における炭素価格のエネルギー価格への影響が、エネルギーの消費削減という従来の役割から、炭素価格の高騰を背景にコストプッシュ型とデマンドプル型の二つの経路を通じた、エネルギー価格上昇の牽引という新たな役割へと変化したことを示しました。加えて、実証研究によれば、COVID-19の発生は、カーボンリスクを顕在化させ、エネルギーと炭素のリスク・リターン関係を、短期利益追求に合致する合理的な正の連関関係から、非合理的な負の連関関係へと転換させたことが示されました。これらの結果が投資家の近視眼的視点から遠視眼的視点への転換を意味していることを考慮すると、COVID-19の発生は、エネルギーのグリーンフレーションを加速させた可能性があります。本研究によるエネルギー政策への示唆として、ゼロエミッションに向けたカーボン価格の設定には、グリーンフレーションが環境と経済に及ぼす悪影響を十分に考慮しなければならないと言えます。
本研究は、2025年10月6日、国際学術誌「Journal of Environmental Management」(ENVIRONMENTAL SCIENCES分野Top10%ジャーナル: Elsevier)に掲載されました。
https://doi.org/10.1016/j.jenvman.2025.127332
