Dimiter Ialnazov ディミター・ヤルナゾフ
京都大学大学院総合生存学館(思修館)
・総合生存学専攻・教授
ブルガリア ソフィア出身、Ph.D.(金沢大学、1997年)
専門分野:開発経済学、制度派経済学
現在の研究テーマ:新興国、及び発展途上国におけるグリーン・エコノミーへの転換
研究概要
- グリーン・エコノミーとは何か?2011年に出版されたUNEPの報告書に書かれている定義によれば、グリーン・エコノミーは「生活の質と社会的公正を改善させながら、環境リスクと生態的な欠乏を大幅に減らすこと」を意味する。つまり、従来の経済開発とは異なり、人々の生活は豊になることが環境破壊や社会経済格差拡大をもたらさないために、様々な対策が必要である。
- なぜグリーン・エコノミーへの転換が重要な課題になっているのか?例えば、現状維持 (business-as-usual) シナリオがそのまま実現すれば、CO2等の温暖化ガスの排出により、地球の平均気温が21世紀末は摂氏4度以上に上昇すると見込まれている。その結果、洪水、干ばつ、台風等の天然災害による被害が大きくなり、人類の生存も脅かされる。特に、新興国、及び発展途上国への被害が大きくなると予想されている。
- グリーン・エコノミーへの転換のために、国のレベルや地方自治体のレベルにおいてどのような対策を採用すれば良いのか?省エネ以外、石炭、石油や天然ガスといった化石燃料の利用を減らし、太陽光や風力のような再生可能エネルギーによる発電に移行すべきである。また、再生可能エネルギーの導入により貧困や社会経済格差を減らす様々な win-win 解決法を模索することが必要である。
現在取り組んでいる研究プロジェクト
トヨタ財団の研究助成を受けて、現在「再生可能エネルギーによる地域再生に向けたビジネスモデル、地域の価値創出、その東南アジアへの移転可能性」という研究プロジェクトに参加している。具体的に、ベトナムにおける再生可能エネルギーの導入について実証研究を行っている。例えば、再生可能エネルギーの導入はベトナムの地域コミュニティにどのようなベネフィットをもたらすことができるかについて現在考察している。
現在指導している学生の研究テーマ
- 太平洋小島嶼発展途上国 (Pacific SIDS) における再生可能エネルギーへの転換
- ベトナムにおける再生可能なエネルギーへの転換
- 代替作物関連の開発援助プロジェクトの評価
- アフリカにおける社会経済格差問題
指導している学生が取得できるスキル
- 英語でのコミュニケーションやディベートができる(まだ実現していないが、今後はacademic English writingも身につけてもらう予定)
- 経済学に関連するテーマを学際的なアプローチ(interdisciplinary approach)で分析できる
- 質問表やインタービューを利用して定性的な方法で研究ができる
経歴
1987年にモスクワ国立大学 (Moscow State University “M.V. Lomonosov”) 経済学部を卒業した後に、ブルガリアのソフィア大学 (Sofia University) で未来学 (futurology)、及びシナリオ分析について研究を開始。国費留学生として1993年に始めて来日し、金沢大学大学院社会環境科学研究科で戦後日本の経済開発モデルと産業政策について博士論文を執筆。1997年にPhDを取得した後、東京工業大学大学院社会理工学研究科助手を経て、2001年に京都大学大学院経済学研究科専任講師に就任。2011年に准教授に昇進し、2013年に京都大学大学院総合生存学館教授に就任。過去の研究では、制度派経済学・進化経済学の視点から旧社会主義国における経済システムの転換について比較分析を行った。
主な研究業績
- ディミター・ヤルナゾフ 「グリーン成長/グリーン経済の概念: 経済開発の新しい枠組みになりうるのか?」、川井秀一、藤田正勝、池田裕一(編)『総合生存学 — グローバル・リーダーのために』、京都大学出版会、2015年7月。
- Dimiter Ialnazov and Nikolay Nenovsky (2011), “A Game Theory Interpretation of the Post-Communist Evolution”, Journal of Economic Issues Vol.45, pp. 41-56.
- Dimiter Ialnazov (2007), “The Impact of EU Accession on Corporate Governance Reform in Bulgaria, Acta Oeconomica Vol. 57(2), pp. 157-190.
- Dimiter Ialnazov (2003), “Can a Country Extricate Itself from Its Post-Socialist Trajectory? The Role of External Anchors in Bulgaria”, Comparative Economic Systems (比較経済体制研究) Vol. 10, pp. 85-103.
- Dimiter Ialnazov (1997). “Industrial Policy and Economic Development in Postwar Japan (1945-1973) from a Comparative Institutional Perspective”, PhD dissertation, Kanazawa University.