MESSEGE
新興国の台頭を伴う経済のグローバル化を背景に,活力ある経済発展の一方で,間断のない金融・経済危機や,エネルギー・資源の有限性や環境破壊など,地球規模の複合的問題が顕在化しています。エネルギー,環境,人口,経済などに関するグローバル問題では,社会科学と自然科学の両方の要因が複雑に絡み合っています。しかし,今日,複数の学問,特に社会科学と自然科学を総合化する方法論が存在しないために,人類が直面するグローバル問題に対して解決策を見出すことができていません。この一点にグローバル問題の難しさが集約されていると私は考えています。社会・経済物理学,複雑系科学は,社会科学と自然科学を総合化する方法論の構築に向けた研究の最前線にあり,21世紀の新しい知的フロンティアです。定性的・定量的な総合的研究を行って学位を取得して,国際機関,シンクタンク,企業研究所で活躍したいと希望される学生を募っています。特に,文理の壁を乗り越えて,国際的に活躍することに関心のある方を歓迎します。出身学部は文系・理系を問いません。
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各研究の詳細はネットワーク社会研究会のホームページをご覧ください。
また,暗号資産やブロックチェーンについては,ブロックチェーン研究センターのホームページをご覧ください。
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"総合生存学の確立にむけて"
京都大学大学院総合生存学館に研究室およびネットワーク社会研究会を主宰しています。学術的な成果を土台に,データ科学が解き明かすエビデンスに基づく政策提言を国際機関にて行ってきました。京都大学大学院総合生存学館では多くの国連機関や国際機関と人材交流の覚書MOUを締結,学生をインターンとして海外におくる,または各機関からセミナー講師を招聘するなどインターナショナルな人材交流を行っています。また,世界に向けた情報発信,政策提言に結び付けるための実践研究にも取り組んでいます。
研究テーマ: データ科学,ネットワーク科学,計算科学
理学博士 池田裕一
1989年,米国ブルックヘブン国立研究所でのクォークグルーオンプラズマ生成(QCD相転移)の研究プロジェクトにおける原子核物理学の研究で,九州大学から理学博士を授与。同年,東京大学原子核研究所でポスドク(日本学術振興会特別研究員PD)として高エネルギー物理学の研究に従事。1990~2010年,株式会社日立製作所勤務(研究員,主任研究員)。この間,1997年にカリフォルニア大学バークレー校 客員研究員としてプラズマ計算物理学を,2010年に国際エネルギー機関(International Energy Agency)でスマートグリッドを含むエネルギー政策を研究。2011年 東京大学生産技術研究所 准教授,その後2012年から現職。高エネルギー物理学・原子核物理学の実験的研究を出発点として,複雑物質やプラズマを対象とする計算物理学を経由,およそ15年前に専門分野を経済物理へと移した。近年はデータ科学と計算科学,さらにはネットワーク科学を用いて,国際貿易,国際租税回避,リスク管理,エネルギー問題などの複雑現象を研究。最近では,分野横断型の新しい学問である総合生存学の確立に取り組んでいる。査読付き雑誌論文113本,書籍33冊を出版し,国内外で37件の特許を出願・登録している。主な近著に『ネットワーク科学』(監訳 共立出版 2019年),『Macro-Econophyisics』(共著 Cambridge University Press 2017年),『Econophysics and Companies』(共著 Cambridge University Press 2011年)など。