農芸化学(食と発酵を中心に) | 京都大学ELP
京都大学エグゼクティブリーダーシッププログラム

農芸化学(食と発酵を中心に)

身近な微生物現象の化学的解明がもたらしたもの

阪井 康能 SAKAI Yasuyoshi
京都大学大学院農学研究科 教授

講義概要

我々をとりまく環境はもとより、我々の体内にも多種多様な微生物が生息している。その存在を知るずっと以前より、経験と伝統を頼りに我々は微生物を利用してきた。世界各地で文化的背景をとともに発達した発酵食品はその良い例である。また地球温暖化に関わる物質循環にも多様な微生物が大きく貢献している。我々の暮らしに大きく関わる自然現象のメカニズムを明らかにする過程で、我々は数多くの微生物とその多様かつ高度な機能に出くわすことになった。
その一方、顕微鏡の発明を発端に多くの細胞構造の詳細が明らかになり、ワイン生産における社会問題を明らかにする過程でパスツールは酵母を見出し、発酵現象を化学のレベルで解明することから“生化学”、微生物の遺伝メカニズムの解明から “分子生物学” など、現代生物学における大きな潮流を生み出すことに微生物は大きな貢献をしている。身近な暮らしに見られる自然現象の関わる諸問題と解決、それに付随する新たな学問体系の成立について考え、農芸化学の立場から、総合生存学について考えてみたい。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

現在、我々が直面し、将来、生物学が解決しうる問題として「食」・「健康」・「環境」が挙げられる。地球規模で増大しつつあるこれらの危機は総合生存学にとっても大きな課題であろう。我々は、一群の微生物や酵母がもつ高度で特有な機能を利用することで、食糧増産・環境の改善・食品機能の評価や創薬など、さまざまなアプローチから、諸問題の解決に取りくむと同時に、そのための基礎的な教育研究を行っている。まだ道半ばであるが、微生物にはまだまだ利用されていない未知の秘めた機能が潜在していること、今後、どのような問題を設定し、微生物をどのように利用していくか、さらにそのためにはどのような技術が必要か、さらにどのような新しい学問体系が生まれる可能性があるか、について論じてみたい。

講師プロフィール

経歴

1982年京都大学農学部農芸化学科卒業。1984年京都大学大学院農学研究科修士課程修了、1988年農学博士 (京都大学)。日本学術振興会特別研究員、京都大学助手(農学部)、1994年京都大学助教授、2005年より現職。この間、1996年から1997年まで文部省在外研究員としてUniversity of California, SanDiego,(Department of Biology)に客員研究員としてカリフォルニア州サンディエゴに在住。1999年から2001年、奈良先端科学技術大学院大学助教授(バイオサイエンス研究科・応用微生物学講座 (客員講座) )併任。2000年から2005年自然科学研究機構(旧岡崎国立共同研究機構)助教授、基礎生物学研究所併任。2005年より現職。2003年より京都大学大学院総合生存学館研究指導協力教員。2016年より京都大学学際融合センター 生理化学ユニット長。帝人奨学会久村奨学生(1982〜1987年)、上原記念生命科学財団海外留学助成リサーチフェローシップ(1996〜1997年)、1998年度農芸化学奨励賞。日本農芸化学会理事(2009〜2013年)、酵母研究会会長(2011年〜2014年)、酵母遺伝学フォーラム会長(2015年〜)

著書

『遺伝子からみた応用微生物学』(共編著)、 『応用微生物学』(共著)、 『マッキー 生化学(第3版)(第4版)』(共訳)、原著論文160報など。

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