京都大学大学院総合生存学館(思修館)

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遊聞会便り(第24号)

田中勇伍(R1年度修了生)
(地球環境戦略研究機関 関西研究センター)

思修館を本年3月に卒業し、久しぶりにテレビを手に入れました。ガールズグループのオーディション番組である「虹の架け橋」を見て毎回号泣する32歳のおじさんの姿を他の学生に見られるようなことなどあってはならず、研修施設ではテレビを見なくて良かったと強く思っています。最近、以前に増して涙もろくなったようです。
 
「架け橋」といえば、私はこの春から環境省系の政策研究機関に就職しました。私の前職は経産省系ですが、エネルギー問題に関して環境省と経産省が対立してきたことは周知のとおりで、今の上司がよく私のことを「あっちの世界からこっちに来た珍しい人」と紹介することにもよく表れています。経済か環境かどっちが大事か、ではなく、どっちも大事だからクリエイティブに解決策と解決までのプロセスを考え率先して行動できる、対立する関係者の間、また学術と実務の間の架け橋になれる、そんな仕事がしたいと願っています。
 
私の場合は思修館での学びを後から振り返ってみて初めて気づけたことでしたが、社会課題と学術の双方に誠意をもって向き合い、専門研究と総合との往復、学術と実践との往復を通して、自分なりに自信を持って言い切れる確からしいものを何かつかむ、これは他のどこでも得がたい貴重な体験なのではないかと思います。どこに向かっているのかも分からずもがきながら匍匐前進するような時間ばかりでしたが、裏を返せば、これだけ自由にとことん頭を悩ませ試行錯誤する機会は人生のうちでそれほど多くはないだろうと思います。思修館入学前と卒業後とでは、見えるようになった景色が随分と違うことを実感しています。
 
学術と実務の「架け橋」について、もう一つ。本年1月の「思修館の集い」で構想を発表した、思修館修了生や在校生が主体となった一般社団法人「総合生存学インパクトセンター(愛称:AISIMAS)」が、ようやく設立される見込みです。WASAVIという海外サービスラーニングプログラムを自主的に企画・運営している在校生と、学術の総合と実践を推進する対話の場づくりに関心を持つ修了生らが合流し、試行錯誤しながら活動を開始しているところです。今後、在校生にPBRなどの際に活用していただけたり、様々な道に進んだ修了生がたまには仕事上の立場を離れて自由な議論を楽しむために活用していただけたりすると、とても嬉しいです。まだまだ発展途上ですが、近いうちに正式なご報告ができると思いますので、楽しみにしていただけたら幸いです。
 
最後に、” Then you will know the truth, the truth will set you free.”という言葉が私は好きなのですが、自分は随分とくだらないことばかりに縛られているなあと痛感します。真理に向かって一歩踏み出してみよう、という機会に恵まれた五年間のおかげで、少し自由になれた、今そんな感覚を味わっています。そして、そうやって踏み出していく勇気は、行動力に満ち溢れる周りの学生から刺激を受けて得られていたように思います。これからも多くの方々のご活躍をこの遊聞会便りなどで拝見し、勇気をいただきながらチャレンジを続けていきたいと思っております。
 
まとまりのない文章になってしまった上に、卒業後間もないということもあってか、学生時代を個人的に振り返り懐かしむトーンが色濃く出てしまいました。末筆ながら、遊聞会の皆様方がどうかご健康で益々ご活躍されることを祈念し、小生の近況報告の締めくくりとさせていただきます。
 
2020年6月29日


前進のポーズ、修了式にて同期と

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