京都大学大学院総合生存学館(思修館)

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研究成果 イタリア20地域における新型コロナウイルス罹患時の死亡リスク推定及び地理的異質性の要因解明

水本憲治総合生存学館(思修館)/白眉センター特定助教らの研究グループは、2020年5月までの、イタリア20地域における新型コロナウイルス(COVID-19)による患者数と死亡者数のデータを用い、時間遅れを調整した新型コロナウイルス罹患時の死亡リスクの推定を地域別に行いました。また地理的異質性の要因を、多変量解析を用いて検証しました。多変量解析には、地域別の、社会経済要因、医療状況、検査数・陽性率等のデータ、流行状況に関連するデータを用いました。
2020年5月10日時点における、時間遅れ調整後の死亡割合は、イタリア全体では17%と推定され、特に被害規模の高いロンバルディア州では24.7%に達し、10%を超える地域は12地域に及びました。また、これらの地理的異質性に関連する要因は、人口密度及び人口当たりの累積患者割合と考えられました。
これらから、社会的隔離政策を通じて、新規患者発生数を下げ、医療システムを崩壊させないことが、死亡リスクを下げることに最も重要であると示唆されました。
 
なお、検査陽性率については、死亡割合との相関は高い(相関係数:0.89)が、一方で、人口当たりの累積患者割合との相関(相関係数:0.85)との相関も高く、多重共線性の検証段階で、検査陽性率は要因として除外されました。これは、検査対象者について、流行早期においては症状がある患者・無症状の接触者であったが、感染拡大に伴って重症度の高い疑い例に限定したことが影響したと考えられました[1]。これらから、検査陽性率と死亡リスクとの間には、因果関係が存在する可能性は低く、新規感染者数の増加・人口当たりの累積患者割合の増加の結果、検査陽性率の増加と死亡リスクが上昇したと考えられます。
 
査読有り
Mizumoto K*, Dahal S*, Chowell G.: Spatial variability in the risk of death from COVID-19 in 20 regions of Italy. Int J Tuberc Lung Dis. 2020.Accpet.
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.01.20049668v3
[1] Onder G, Rezza G, Brusaferro S. Case-Fatality Rate and Characteristics of Patients Dying in Relation to COVID-19 in Italy. JAMA
 
その他の新型コロナウイルスに関する業績等
http://square.umin.ac.jp/kj/kmizumoto_jp.htm

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