京都大学大学院総合生存学館(思修館)

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遊聞会便り(第21号)

山口栄一(旧教員)
京都大学名誉教授
京都大学特任教授

コロナ禍(COVID-19)のなか、自宅待機が求められ、不自由な毎日をお過ごしのことと思います。約350年前、ペスト禍のためウールズソープの自宅に帰ることを余儀なくされたアイザック・ニュートンが、彼のすべての発見をそこで成し遂げたように、皆さんも今までできなかった新しい挑戦をこの機会に始めてほしいと思います。私も今年3月に定年退職して、新しい挑戦を始めました。それは、2019年に博士号を取得した周敬棠さん(2014年度入学、専門:薬学)と立ち上げたORBIO株式会社の本格始動です。
 
まず、今年1月にファンドレイズを行なったところ、数千万円の出資をいただくとともに、やはり数千万円の寄付金を大企業からいただきました。そこで4月になって特許を書き上げ出願するとともに、鴨川のほとりにあるクリエイション・コア京都御車に研究室を設営して実験を始めました。
 
この会社は、全く新しい癌征圧法をコア技術とします。癌細胞だけが特異的に食べる低分子化合物に金属原子を結合させたORBIO分子を投与して、癌細胞にのみ金属原子を集積させた後、高周波を照射して癌細胞のみを特異的に熱するという方法です。 ORBIO分子を実際に合成し、ゆるやかな高周波で昇温できることを見出しました。原理的に1癌細胞でも効果があり、かつステージ4でも寛解すると期待されます。
 
また2018年より取り組んでいた京都7企業(京セラ㈱、 ㈱島津製作所、 SCREENホールディングス㈱ 、 NISSHA㈱、  ㈱堀場製作所、 村田機械㈱、 ㈱村田製作所)と7大学(京都大学、 京都工芸繊維大学、 京都府立医科大学、 京都府立大学、 京都産業大学、 同志社大学、 立命館大学)の連合体創業が、2年をかけてついに形になりました。京都府・京都市も加わって、2019年以来内閣府で進めてきたイノベーション改革法の1つ目である「出島」をめざし、イノベーション改革法の2つ目である新生SBIRを獲得すべく動きたいと思っています。
 
これからも1年間、産官学連携本部特任教授として引き続き京都大学エグゼクティブ・リーダーシップ・プログラム(京大ELP)を経営いたします。2015年度に立ち上げたこの京大ELPは、5年かけてなんとか1億円事業にまで発展させられました。毎週土曜日10時から18時まで橘会館でやっていますので、終了後にぜひとも遊びにいらしてください。
 
学生のみなさん、2014年4月1日以来、6年間ほんとうにお世話になりました。何よりも2015年度に1年間、船哲房に住まわせていただき、学生のみなさんと語り合ったことが、思修館での一番大切な思い出になりました。私が「学生ファースト」を覚悟できたのも、ここでの学生の方々との対話がきっかけです。もし何か心配ごとがあったら、今まで通りいつでもいらしてください。私は皆さんのメンターであり続けたいと思います。 しっかりと一歩一歩前に進み、未知なることを解き明かして学位論文を完成させ、社会で活躍されることを心から願っています。

山口栄一研究室のみなさん。橘会館にて今年3月撮影。左から、Xu Congさん(2016年度入学、専門:経営学)、前田里菜さん(2016、生物化学)、佐々木勇輔さん(2014、遺伝子工学、今年3月に博士号取得)、山口栄一、鶴羽愛里さん(2015、認知神経科学)、夫津木廣大さん(2015、国際政治学)。なお、長島瑠子さん(2016、科学コミュニケーション論)は、豪キャンベラに滞在中。
2020年04月14日
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