京都大学大学院総合生存学館(思修館)

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遊聞会便り(第19号)

奥勇紀(H30年度修了生)
アステラス製薬株式会社 開発本部プロジェクト推進部

皆さま、ご無沙汰しております。昨年度に京都大学総合生存学館を卒業いたしました、奥勇紀です。現在は、アステラス製薬株式会社の開発本部プロジェクト推進部にて、職務についております。今回、このように遊聞会便りに寄稿する事が出来るのをとても嬉しく思います。
 
総合生存学館を卒業し、早くも10ヶ月が経過いたしました。思い直せば、総合生存学館での生活は本当にかけがえのないもので、先生方や専門領域の違う仲間との議論、いつでも自習ができる環境、様々な分野の外部講師の講義等、刺激を受けっぱなしの毎日だったように思います。3言語以上を平気で操れる方、ディベートで全く歯が立たない方、並外れた行動力を持った方等、尊敬できる方ばかりで、そんな方々と日常を共に出来た事は私にとって宝物です。特にメンターとして関わっていただいた光山正雄先生、山口栄一先生からの薫陶を受け、本当にやりたい事は何なのかをしっかりと考え、自身のキャリアも含め全て自分で決めるという意識が形成されたように思います。
 
さて、現在私が所属する開発本部は、非臨床試験の結果から薬効が期待される薬のタネに対して、人に対して本当に効果があるのか、安全面は確保されるのか、という事を明らかにするため、実際に薬剤を投与する臨床試験を実施する部署です。また、その結果を元に製造販売承認を得るために規制当局と対話を行い、承認を得る事を主たる目的としています。承認を得るには多くのプロセスを踏む必要があり、統計的な手法も含めた試験のデザインの決定から、得られるデータの質の保証、提出する書類の作成など、様々な部署の方が連携し新薬開発を進めていく事となります。その中でも私が所属するプロジェクト推進部は、新薬の開発プロセスをよりスムーズにかつ加速させるため、広い視野を持って開発の戦略を練り、各部署との情報共有を密接に行いながら、その時々のメインとなる担当部署をサポートする、野球でいう監督や捕手のような役割であると私個人は考えています。部署連携の機会が非常に多く、入ってくる情報量も多いため、医薬品の開発プロセスを中枢で学ぶことができ、非常に刺激的な毎日を過ごすことができています。
 
私は元々生物系の基礎研究を行ってきましたが、総合生存学館での「基礎研究と社会との架橋」に関する学びも有り、基礎研究の成果を社会へと繋げる開発の仕事に強い興味を抱いておりました。入社後は、新薬開発はもちろん薬学の知識も全くないにも関わらず、抗がん剤開発におけるマネジメント職を任せていただきました。私の専門性である分子生物学や総合生存学を活用できる場面が限られている事もあり、ほぼ0からのスタートでした。なかなか貢献できずに悔しい時期を過ごしましたが、その中で出来る事を考え、臨床の知識を可能な限り取り入れ、患者さんが本当に困っているという現実を学び、この1年で精神的にもよりタフに成長できたように思います。
 
医薬品開発の世界においてまだまだ未熟ではありますが、一歩ずつ着実に成長できていると実感しております。今後も、総合生存学館にて身につけた様々なストレスへの対応力、ここまで育ててもらった事への感謝の気持ちを忘れずに、医薬品開発のプロセスをより深く学ぶべく、この世界にどっぷりと浸かって行こうと思っております。
 
2020年2月1日


本社にて

京都大学大学院 総合生存学館

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