京都大学大学院総合生存学館(思修館)

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研究成果 本学館院生の周敬棠さんを含む研究チームが、抗がん剤等の医薬品候補化合物を効率よく探索するための基盤技術の開発に成功!

この半世紀で世界人口の高齢化が急速に進展しています。高齢化が進行することで危惧されることの一つとして挙げられるのは、重篤な疾患にかかるリスクです。中でも「がん」が現代社会に与える影響は大きく、がんは日本における総死因の三分の一を占めます。がんを克服するために世界中の創薬研究者が、患者さんの体になるべく負担をかけず効果の高い医薬品化合物の創成に携わってきました。これまで様々な医薬品が患者さんの方々のもとに届けられていますが、まだまだ治療満足度は高いとは言えず、画期的な抗がん剤の創出が求められております。



所属研究室(Kodadek研究室)で実施されていた医薬品候補の探索アプローチとそのボトルネック

 

今回、総合生存学館5年生の周 敬棠(しゅう けいとう)さんを筆頭とするスクリプス研究所のグループは、抗がん剤に代表される医薬品候補化合物を効率よく探索するための基盤技術の開発に成功しました。
 
One-Bead One-Compound(OBOC)ライブラリーを用いたスクリーニング方法は、標的疾患タンパク質に対するヒット化合物の同定が迅速かつ低コストで実施できるため、有用な医薬品候補探索アプローチです。近年OBOCライブラリー上の化合物情報をDNAにコードすることで、ビーズを用いたスクリーニング戦略のスループットが大幅に向上することが報告されています。(上図上段:A, B, MacConnell., et al., ACS Combi Sci., 2015, 17, 518. 参照)
 
しかし本手法ではDNAタグ存在下でライブラリー化合物を構築する必要があります。DNAタグが化学的処理の度にダメージを蓄積し、後々の化合物情報の読み取りエラーにつながることが、本戦略の大きなボトルネックでありました。(上図下段)
 
このボトルネック解消のためにDNA-compatibleなライブラリー構築条件を見出す必要がありました。穏和な化学条件である、プロリン触媒を用いたアルドール反応が有効であると考え、固相に適応したところ、極めて良い収率で、かつ、DNAにほぼダメージを与えずに化合物を構築できることを実証しました。これにより、様々な医薬品候補化合物を迅速に探索するためのプラットフォームの確立に成功しました 。
 
題名:
Solid-Phase Synthesis of β-Hydroxy Ketones Via DNA-Compatible Organocatalytic Aldol Reactions
 
雑誌名:
ACS Combinatorial Science
 
著者:
Keitou Shu and Thomas Kodadek
 
ACS Publications WEBSITE
https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acscombsci.8b00001

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