京都大学大学院総合生存学館(思修館)

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ニュース 「食品ロスについて学ぼう!あまりもの de コラージュ」を開催しました。

2019年6月3日(月)に、食品ロス削減啓発シンポジウムを京都大学生向けに開催しました。本シンポジウムは、食品ロスについて、食の流通に携わる様々なアクターからみた視点を共有し、相互理解を深め、京都大学生が貢献できることを発見することを目的としました。
まず参加者とスピーカーが親睦を深められるよう、京都大学東一条館のコミュニティラウンジで共に軽食を共にいただきました。
 
シンポジウムの初めに、国連食糧農業機関(FAO)の駐日連絡事務所、所長 チャールズ・ボリコ氏から開会のご挨拶をいただき、その後京都大学大学院総合生存学館、山敷庸亮教授からFAOと京都大学のこれまでの協力の歩みをご説明していただきました。

国連食糧農業機関(FAO)の駐日連絡事務所、所長 チャールズ・ボリコ氏

京都大学大学院総合生存学館、副学館長、山敷庸亮教授

そして、協働で開催しているエコ〜るど京大代表の浅利美鈴准教授と、学生の田中千尋さんからエコ〜るどの食品ロス削減に関する活動のご紹介をいただきました。持続可能なシーフード(ブルーシーフード)を使用した食品開発や、食品ロスを活用した出汁づくりなど、活動は多岐にわたっていました。

京都大学大学院地球環境学堂、エコ〜るど京大代表、浅利美鈴准教授

チャールズ・ボリコ氏から、食品ロスの世界の状況や、食品ロスが世界の1つの国であったなら、世界第3位の温室効果ガス排出国であることなどを学びました。さらに、世界の1/3の食糧生産が捨てられている現実、同時に栄養失調で亡くなる子どもたちの割合が疫病で亡くなる子どもたちのほうが未だに高いことを伺いました。また、FAOは昨年子ども向けの食品ロス削減啓発教材を発行し、それに付随する「食品ロス削減9つのヒント」として1)食べれる分だけオーダーする、2)残り物をリメイクする、3)買い物を事前に計画し賢く実施する、4)規格外野菜も買おう、5)冷蔵庫を正しく理解し使用しましょう、6)First in, First out (FIFO)を実践しましょう(先に保存した物から消費しましょう)、7)賞味期限、消費期限などの日付を正しく理解しよう、8)発生した食品廃棄物を肥料化しましょう、9)食べ物をシェアしましょう、をご紹介いただきました。ボリコ氏の熱意のこもった語りに、聞いていた生徒も真剣な表情で聞き入っていました。 
 
続いて、農学研究科秋津元輝教授からは、生産者側の立場から食品ロスについてご講演いただきました。生産者側として、やはり規格外野菜(以下、B級野菜)は問題であるものの、高値がつかないB級野菜を出荷するコストや労力がかかること、B級品が市場に出回ることで規格野菜の値段が下がる恐れがあることのほか、農家(生産者)としてより良い品質の作物を作り市場に出荷したいという誇りや、良い食べ物をつくりたいというやる気があることを紹介してくださいました。

京都大学農学研究科、秋津元輝教授

パネルディスカッションでは、まず京都大学大学院総合生存学館博士課程の野村亜矢香氏が、近年多くの方々に知られるようになったフードバンクの活動と、その支援を受け取る側の受益者の人々の活用や営みを紹介しました。その中で、支援を受け取る人々は、受け取る食品を選べない不便さの中でも調理を工夫し、近しい人々と共に食べることによって新たなつながりや、食べ物に新たな価値を与えていることが判明しました。

京都大学大学院総合生存学館博士課程の野村亜矢香氏

仲卸を経て、小売業の視点からお話をしてくださったのは、日本チェーンストア協会、関西支部参与の斎藤 敬氏でした。小売業界のマーケティングと、消費者の行動心理からの食品ロス発生のお話は、聞き入る生徒にとって目からウロコだったようです。やはり、買い物の前に、何を、どれくらい必要なのかということを明確にしてから計画的に買い物することが何より食品ロス削減および経済的にも貢献することがわかりました。

日本チェーンストア協会、関西支部参与、斎藤 敬氏

そして、京都大学京都大学生活協同組合、食堂部統括店長、前田晴久氏からは、飲食業の視点からお話をいただきました。京都大学生協食堂では、前週、前日に売れた食事量、天気などすべてデータ化し、オーダーする食べ物の量から調理する食数まで詳細に管理し、残る食品ロスを最小限に抑える経営努力を日々実践していることが紹介されました。

京都大学京都大学生活協同組合、食堂部統括店長、前田晴久氏

また、学生の好みのメニューから新しいメニューの考案、栄養素表示、学生がオーダーできる量の調節可能など、学生からすると毎日食堂で見る取り組みが、食品ロス削減、防止の役割があることに気づかされました。
京都大学にも様々なサークル活動があり、規格外野菜を使用して調理、提供を行う学生サークル「でこべじカフェ」があり、彼ら彼女らの活動を学生代表である小西 沙那さんからご紹介いただきました。
 
ディスカッションの質疑応答からは、様々な立場のスピーカーや学生から質問が上がりました。野菜などのパッケージングにこだわらず、必要な分量で買える量売りは可能であるかとの質問に、斎藤氏は、野菜の出荷場所記載のルールがあるので、小売業としても量売りはしたいが難しいという葛藤があるとの回答でした。また、賞味期限・消費期限に関する学生からの質問に、斎藤氏は賞味期限は通常の本当に品質に問題が発生するより0.8(ガイドラインなので企業によってはばらつきがある)かけた日数を記載しているため、賞味期限はあくまで味や色に劣化がみられるかもしれないという目安の日程で、食べて問題があるわけではないことをご説明してくださいました。
 
全ての講演とパネルディスカッションが終了したあと、学生たちは得た知識を理解、活用し、食品ロスを同じく京都大学生に啓発するためのアート作品を作る活動をしました。絵の具からクレヨン、または粘土を使った模型作りまで、思い思いの画材や素材を使い、啓発ポスターや模型を作成しました。ポスターも、平面だけに捉われず、折り紙やゴミまで活用し、3Dアートを作成するなど、学生が持つ創造性が垣間見えました。

 

様々な画材を使いながら思い思いのポスターや模型をつくる学生たち

閉会の言葉を京都大学大学院総合生存学館学館長寳馨教授よりいただき、閉会いたしました。

京都大学大学院総合生存学館、学館長、寳馨教授

京都大学大学院 総合生存学館

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