京都大学大学院総合生存学館(思修館)

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遊聞会便り(第11号)

武田秀太郎(H27年度修士相当修了生)
京都大学総合生存学館思修館特任助教
公益財団法人笹川平和財団アドバイザー
英国王立技芸協会フェロー

思修館への着任から、はや1年が経とうとしています。今年は年間出張日数が100日に届こうかという怒涛のような一年で、白石様からの依頼がなければ、改めて今の境遇を省みる機会もなかったかもしれません。窓の外に静かに降り積もる雪を横目に、寒空の下でも元気に響く錦林小学校の子供たちの声を聞きつつ、少し思修館での粒々辛苦を振り返って見たいと思います。
 
思い起こせば5年前、入学を許して頂き、個性溢れる同期達とアカデミアの門を叩いた時、思修館はまだ近衛館に間借りをしていたことを懐かしく思い出します。合宿型研修施設はまだ廣志房しか落成しておらず、先輩方と1つの建物でギュウギュウに暮らしたものでした。前衛的なプログラムゆえ誰も先が見通せない中、研究で不安を紛らわせていたのは私だけでは無かったのではないでしょうか。その後、船哲房、東一条館と建物が次々と完成し、新入生もどんどんと入学し、今や堂々たる大学院へと成長した様を改めて見る時、たった5年の事にも関わらず隔世の感を禁じ得ません。今になって、学生同士が昼夜を分かたず切磋琢磨する環境の実現という松本前総長のビジョンの正しさを見る心持ちです。
 
私自身は修士課程修了後に一度外部に転出し、博士号取得の後、昨年4月から特任助教として今のポストに着任をしています。古巣である思修館で働けるということは、当時お世話になった先生方、そして気心の知れた同期や後輩達と研究が継続出来るという点で極めて恵まれた環境であると感じています。熟議で関わった先生と研究をする機会に恵まれたり、新入生当時に酒を酌み交わしながら放談していた構想が共同研究として結実したりと、学際研究の醍醐味を味わえるポストであることを日々実感しています。特に3期生(2014年入学生)全員の共著でバングラデシュにおける海外サービスラーニングの活動成果を査読付き論文として出版出来た事は、私にとって望外の幸せでした。当時JICAでお世話になった方々にも大変喜んで頂き、僅かばかりのご恩返しとなったことを望むばかりです。(写真1)さらに昨年夏には有給を使いハーバード大学の修士課程に1ヶ月間留学するという贅沢も許して頂き、その後のハーバード大学との論文の共同出版にも繋がりました。我々の主要プロジェクトの一つ、ASEAN地域における再生可能エネルギー導入政策研究が名誉ある国際賞を受賞(写真2)出来た事はこうした思修館らしい取り組みの後押しの結実であると考えており、私を受け入れて下さった思修館にはただ感謝あるのみです。
 
唯一の虚しさは同期生やお世話になった先輩方・先生方が一人また一人と京都を離れてしまうことですが、今後は心を入れ替え孟子に従い「天下ノ英才ヲ得テ之ヲ教育」することに新しい楽しみを見出していきたいと考える次第です。
 
2019年02月15日


写真1
バングラデシュにおいて同期生達と共に
 

写真2
International Young Energy Professional
of the Year Award受賞記念講演

京都大学大学院 総合生存学館

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