京都大学大学院総合生存学館(思修館)

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遊聞会便り(第7号)

近況報告―退職して6か月

大嶌幸一郎(旧教員)
京都大学名誉教授

平成30年3月末をもって二度目の退職をしました。19歳で京都大学工学部工業化学科に入学して以来、71歳になるまで、2年半のMIT留学期間を除いて丁度50年間京都大学でお世話になり、健康上の問題もなく無事退職を迎えることができました。これも一重に大学の先輩、同輩の先生方ならびに職員の方々のお陰と厚く感謝しております。61歳の時に工学研究科長・工学部長に選ばれたことで大学での生活が一変しました。それまで有機化学の一研究者であったものが、このあとの10年は大学運営に関わる業務が中心となりました。63歳で一度定年退職しましたが、引き続き環境安全保健機構長として勤めることとなり、リーディングプログラム「思修館」の立ち上げ、新大学院総合生存学館の創設にも関与する機会をいただきました。特に、平成22年度から川井先生と一緒に係わらせていただいた総合生存学館の創設については思い出深いものがあります。
 
この8年間のそれは、それまで担当していた工学研究科・工学部での教育、研究とは全く異なった経験でありました。思修館で、自分の専門である有機化学とは違う分野で博士の学位の取得を志す学生さん達をどのように指導すればよいか手探りの状態が続きましたが、幸い素晴らしい学生さん達が立派に育ってくれ、在職中にも10数名が社会に巣立っていきました。少しは役に立てたのなら嬉しい限りです。
 
さて、先に述べたように最後の10年間は工学研究科長、環境安全保健機構長、副学長などの役に就きました。この間体力的にも精神的にもハードな毎日を送ってきたものですから、退職後のこの6か月はのんびり一日1時間程度のウオーキングと、60歳を過ぎて始めたゴルフを月に3~4回する以外、全く予定のない日々を過ごしてきました。これは、退職後しばらくは何もせずゆっくり過ごしたいという私の望みではあったのですが、就寝時間も起床時間も自由過ぎる不規則で不健康な生活を送る結果となりました。
 
少々反省の気持ちが沸いてきまして、これから先のことを真剣に考えなければならないと思うようになりました。自分がまだ何か世の中の役に立つようなことがあるだろうか。あるいは健康の続く限りただ毎日楽しみを見つけて過ごせばいいのだろうか。取り敢えずボケると困るので、まず息子達の使っていた机を整理して一日2時間は机の前に座ることにしました。漫画から哲学書まで家にあるあらゆる種類の書物から、やはり馴染みのある有機化学の、しかも自分が15年以上前に執筆した専門の教科書を読み返すことを始めています。そして、一般の人には理解されにくい化学、とりわけ有機化学という学問の素晴らしさが伝わるような本が書ければと考えています。
 
最後に、今後は京都大学並びに総合生存学館の益々の発展と卒業生の皆さまの世界での活躍を心から願って、大学の外からずっと見守っていきたいと思っています。
 
平成30年09月30日

▲自宅にて
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