京都大学大学院総合生存学館(思修館)

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ニュース 本学館院生の研究成果が、査読付き国際論文誌『Journal of Development Policy and Practice』に掲載されました。

本学館では「サービスラーニング」として、社会貢献活動を実践するカリキュラムがあります。2014年入学生は本サービスラーニングとして2015年8月からバングラデシュ人民共和国に4週間滞在し、農村部コミュニティ開発の最前線に携わりました。2014年入学生一同の現地での活動は参加型農村開発手法”リンクモデル”の成功要因の調査研究であり、その結果は現地において関係省庁で発表を実施した他、JICA現地事務所においても報告を実施し、専門家の方々より高い評価を受けていました。
 
今回、その研究成果が査読付き国際論文誌「Journal of Development Policy and Practice」(SAGE社)より”The Success of the Link Model Programme in Rural Bangladesh: An Empirical Analysis”として出版されました。派遣された15名の学生中、10名は国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊員として派遣されましたが、青年海外協力隊員がその活動を学術論文として出版した例はこれが初めてです。

 




 

http://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/2455133318777163
 
バングラデシュの農村部における開発の最大の課題の1つは、行政と農村部の村人との乖離でした。そこで、各地方(ユニオン)にファシリテーターとなる”UDO”と呼ばれる専門職員を配置するとともに各村ごとに”村落会議”(Gram Commitee)を設置し、それらのステークホルダーを”ユニオン調整会議”に一堂に招くことで行政と農村部の”縦のリンク”ならびに近隣農村同士の”横のリンク”を確立するという「リンクモデル」が、京大の支援のもとで1970年代より試行されてきました。このリンクモデルは一定の成功を収め、徐々に広がりを見せていましたが、農村によって成否が分かれる事が課題の一つでした。
 
本研究では、このリンクモデルの成否を定量的に評価する事を目的に、102名の村人と153名の村落部における議員に対してアンケート調査を実施しました。結果は、リンクモデルのプロジェクト数を左右するのはUDOの能力であり、質を左右するのは村民の理解であることを示唆しました。併せて、リンクモデルが村落部に想定以上に浸透している事、また満足度が村人の性別・収入・教育等に依らないということが示されました。
 
これらの成果は、リンクモデルをバングラデシュ全土へと広めるにあたり、その成功率のシステマティックな向上に繋がる有益な成果です。本成果の現地政府への発表後、リンクモデルはその実施範囲を広げることが正式に決定され、現在Participatory Rural Development Project -3としてバングラデシュの600の地域(ユニオン)で実施されています。
 
【題名】
The Success of the Link Model Programme in Rural Bangladesh: An Empirical Analysis
 
【雑誌名】
Journal of Development Policy and Practice
 
【著者名】
Shutaro Takeda, Go Okui, Nanao Fujimura, Hisae Abe, Yuka Ohashi, Yuki Oku, Kyoko Kiriyama, Naoki Saeki, Yusuke Sasaki, Yingying Zhu, Keitou Shu, Tomoharu Takahashi, Shuntaro Noda, Kazuki Hao, Kazumasa Hirao, Shizuka Nakano and Senichi Kimura
 
【URL】
http://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/2455133318777163

   ▼現地調査の様子

 

現地政府への発表の様子▲   

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