京都大学大学院総合生存学館(思修館)

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レポート 2017年度海外武者修行(5)

海外武者修行として、4年次に8ヶ月程度国際機関等へのインターンシップを実施しています。
世界視点での自らの位置取りと意識の改革に加えて、国際的リーダーとしての意識と責任感及び突破力を一体的に育成することを目的としています。
2017年度の海外武者修行から帰国した、学生を一人ずつご紹介します。

プロフィール
名 前  :奥井 剛
専 門  :総合生存学/倫理学、公共哲学
機 関  :国際連合教育科学文化機関(UNESCO)
派遣国  :フランス
派遣期間 :2017年4月18日~2018年2月15日
 
海外武者修行はいかがでしたか?業務内容を詳しく教えてください。
まず、着任してすぐに世界人文学会議(World Humanities Conference)の準備に取り掛かりました。チームビルディングとマネジメントを任せていただき、プログラム管理、成果文書起草、編集などにも携わりました。開催時には研究発表もさせていただきました。開催後は事後処理とプロシーディングス(国際哲学人文学評議会ホームページより入手可能)の編集に携わりました。それから世界哲学の日(World Philosophy Day)に関する業務にも取り組みました。2017年はユネスコ総会と日程が重なったためユネスコ主催の行事はなく、その代わりに各国の取り組みの取り纏めとウェブ・コンテンツ管理などの簡単な作業を行いました。それから任期の最後にいただいた仕事として、2018年の世界哲学の日のテーマ設定に関して新しい事務局長に提言を行うための文書のドラフト作成に携わりました。
 
印象に残っている出来事は何ですか?
世界人文学会議の閉会式で成果文章が採択された後に、Témé Tanというアーティストによるライブ演奏があったのですが、その時の出来事が印象に残っています。彼の素晴らしいパフォーマンスに触発されたあるインターンが自発的にステージに上がって踊り出したのをきっかけに、われわれスタッフや私の上司、事務局長補、世界人文学会議の会長や世界人文学哲学評議会の事務局長、各国の研究者や要人なども加わり、思いがけず皆で踊りを楽しむという一幕がありました。難しい問題に直面する現代の世界における人文学の意義を問うたこの重要な会議の最後に、肩書や形式に囚われず人間として感じた喜びを分かち合う行為に尊さを感じ、心を動かされたのを覚えています。
 
海外武者修行に関してアピールしたいポイントを教えてください。
海外武者修行の魅力は、それまで研究を通して考察を深めてきた問題について、その知見を活かし世界の最前線で実践に携わることができる点だと思います。世界人文学会議は400人以上の研究者、各国の要人を含む1000人以上の参加者が一堂に会した大きな会議であったというだけでなく、その成否が人文学の未来を左右する重要な会議であったため、チームで仕事をやり遂げた達成感は一入でした。私が起草に携わり、公開討議にかけ会議最終日の朝までチームで編集に取り組んだ成果文章は閉会式で無事採択され、11月に行われた第39回ユネスコ総会に提出されました。それを踏まえて新たに採択された決議案では、随所で人文学の位置付けが見直されることになりました。これまでエビデンス・ベース・アプローチのみが推奨されていた加盟国の公共政策の強化に関する文面において、科学的証拠に加えて人文学的知見、倫理、人権の枠組みに基づいて公共政策を強化することを要請する項目が盛り込まれるなど、人文学の再評価が進んでいます。
 
最後にメッセージをお願いします!
海外武者修行を行うにあたり、先生や事務の方々を始め、受け入れ先の上司や邦人職員の皆さまなど、本当にたくさんの方々にお世話になりました。今年は博士課程最後の一年となりますが、この貴重な経験を活かし次につなげられるよう、一日一日を大切に研究に向き合っていきたいと思います。末筆ではございますが、これまで支えてくださった皆様に、この場をお借りし改めて厚く御礼申し上げます。


▲同僚と業務を行っている様子
 

▲リエージュ大学で担当と
プログラムを確認しているところ
 

▲熟議民主主義についての
パネル・ディスカッションで発表、
本部で開催された国際シンポジウムにて
[詳細]
 

▲最終日、セクションのチームが
開いてくれた送別会
 

▲ユネスコ憲章前文の石碑
 

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