京都大学大学院総合生存学館(思修館)

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ニュース 本学館院生の土田亮さんがスリランカで被災地調査を行いました。

(上:Urban Development Authority Ratnapuraでのmeetning後の記念撮影)

2018年2/1-2/7及び3/14-3/25の2回にかけて、スリランカ南西部のコロンボ及びラトゥナプラにて自然災害、特に豪雨がもたらす洪水や土砂災害が住民の居住環境に与える影響と持続可能な復興のための要因分析について本学館の新2回生である土田亮が現地調査を行いました。
 
調査対象国であるスリランカは、南アジアのインドの南に浮かぶ雫型の島国で、地理・気候的特徴から5月~9月にかけての南西モンスーンの時期はヤラ期 (yala) と呼ばれる、日本では梅雨に当たる気象現象が、風が山岳地帯に遮られてスリランカ南西部に多量の雨をもたらします。この気候的特徴から毎年豪雨と洪水、地滑りをもたらし、近年被害においては2016年5月に3.4万人、2017年同月には6.3万人の人々が被災したと報告されています。とりわけスリランカ南西部の主流河川に沿った山間部から沿岸部にかけて被害が集中していることも国連や研究機関、論文などのレポートに記されています。
 
私はこれらの連続して発生した巨大な災害のインパクトに関して、2/1-2/8に行った第1回現地踏査より、関係省庁や機関の職員にインタビューを行い、被害及び復興支援に関する実状や課題、調査対象候補地の選定を行いました。また、第2回目の調査(3/14-3/25)では、引き続き職員へのインタビューを行いつつ、実際に選定した調査対象候補地にて当該地域での住宅の観察及び住民への居住環境及び復興過程に関する予備インタビュー調査を行いました。
 

 

(左:ラトゥナプラのすぐそばを流れるKalu Gangaとその沿岸の模様)
(右:Ratnapura Municipal CouncilにてDisaster Risk Reduction & Environmental Conversation Unitの職員へのインタビュー模様)
 
職員や関係者、住民の現場や個人の対応や考えに関するヒアリングを行い現地の実情や基礎データを収集した結果、ラトゥナプラにおいて、豪雨は周期的なイベントであるため、地域住民にとって予期できない災害ではなく、むしろ人々は災害が来ることに慣れていて、自身の経験に基づいて避難するかどうかを判断するという話が窺えました。また、2017年では経験を上回るような発生頻度の低い危機的な洪水が発生するため、人々は避難し損ね、多大な影響を受けたということも判明しました。そして、政府と地方・地域の見解には大きな隔たりがあることと必要な支援、土地利用、避難のための準備に対する課題もついても明らかになりました。
 

 

(左:Nivithigala郡Erabadda地区の学校の倉庫に被災当時の洪水水位の跡が残っており、男性の先生が示している位置から壁の色が異なっています)
(右:Nivithigala郡の道中でよく見る土砂崩れの模様。プランテーションで植えられたゴム樹により従来の土壌環境が変わり、土砂崩れにつながったのではないかという指摘が職員から伺えました)

 

(左:Nivithigala郡Dombagammana地区の一時居住住宅。従来ゴム樹林だった山を政府が買い取り、土砂災害に被災した家族たちの新しい一時的シェルターのために住宅を建設しています。まだまだ十分な生活再建には至れていないようでした)
(右:Ratnapura郡 Mudduwa地区の洪水常襲地区での住宅の一つ。住宅からおよそ50mもないところに前述したKalu Gangaが流れています。)
 
前述した第1回調査からラトゥナプラでの現地調査では、ラトゥナプラにおける2016年及び2017年の災害の実態について明らかにすることはできました。特に、地方側から見た政府の見解に対するギャップを強く指摘されましたが、具体的なギャップを確認することは第1回調査の中ではできませんでした。また、今回の調査から住民の生活形態、知識、そして、コミュニティベースの体制について、具体的には避難した場所、災害に対する考え方、自主防災組織や体制、防災計画の有無とその運営方法などについて知る必要があると考えられました。その課題を踏まえた第2回調査ではこれらの課題について職員へ追加インタビューを行い、現在、その結果を分析中です。
 
次回長期滞在での調査(9月約1ヶ月間予定)に向けて、あるいはQE1(修士論文)、学会誌論文の執筆に向けたフィールドの協力体制の確立やプレサーベイ、現地視察も行えたとともに、実状の把握と調査紙・調査規模の妥当性の確認を行うことができました。これらを踏まえて、次回の調査では、住民の肩越しの視点から自然災害に対する経験や知識を獲得できるよう、事前にデータや知識のインプット・質問紙の準備を施すとともに、住民の生活観察にも力点を置けるよう、訓練しておこうと思います。
 
実は今回が初めての海外調査、フィールドワークということもあり、英語でのコミュニケーションに不安に思っていましたが、思いの外スムーズにこなせたのでホッとしています。また、スリランカでお会いした皆さんの優しさもあり、貴重な機会やフィールド視察に立ち会うことができました。本当に感謝ばかりでございます。フィールドワークは毎回刺激ばかりで早くまたスリランカへ行きたいです。今後も感謝とワクワクの気持ちを忘れず研究に邁進していきます。

総合生存学館 新2回生 土田亮

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