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水の惑星、地球

地球は水の惑星とよばれ、太陽系の惑星で唯一表面(の3分の2)が液体の水で覆われています。また水は生命の源であり、地球上のすべての生命を維持するために欠くことのできない貴重な資源です。気候変動等の様々な環境変化や人類の経済活動・産業発展などにより、洪水や渇水、また水質悪化といった地球規模での水資源問題が大きな注目をあびています。
水循環プロセスを通じて水は大気・森林・土壌そして都市を循環し川から海に注ぎ、これらを浄化すると同時に栄養塩や汚染物質を下流に輸送し、河川流域から海洋を通じて地球規模で循環させます。総合生存学としてもこの水循環に焦点を当てた研究を行ってゆかねばなりません。





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        第5回ラプラタ川流域ワークショップの
        公式ポスター


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        UNESCO-IHP, UNEP-GEF, ANA, Itaipu Binacionalらの代表者による
        第5回ラプラタ川流域ワークショップの開会挨拶
        山敷先生はオーガナイザーの一人として挨拶

1992年にリオデジャネイロで開催された地球サミット(UNCED)で環境と開発に関する行動計画「アジェンダ21」が採択され、統合的水資源管理IWRM(Integrated Water Resource Management)の概念が世界中に導入されることになりましたが、近年の大きな社会と環境の変化により新たな対応が求められており、2012年6月には国連持続可能な開発会議(UNCSD-Rio+20)が開催されました。また1997年にモロッコ・マラケシュ、2003年に琵琶湖・淀川流域(京都・大阪・滋賀)で開催された世界水フォーラムでも、統合的流域管理IRBM(Integrated River Basin Management)について議論されています。
そのような中、総合生存学館山敷先生は、海洋を含むさらに広域の相互影響にも着目した統合的陸域海洋管理ICOM(Integrated Continental Oceanic Management)へと概念を拡張していく必要があると提唱しています。またライン川に代表されるように、国境を越えて流れる国際河川(越境河川)も多く、水に関する産業も世界中に拡大しているため、水の問題に対して地球規模で重要となります。


水に関わる眼には見えないものをよむ

山敷先生は、前職のUNEP-IETC協力企画官、日本大学准教授時代から、国連環境計画UNEP・世界水アセスメント計画WWAP・国連教育文化機関国際水文プログラムUNESCO-IHPなどとともにラプラタ川流域ワークショップをアルゼンチンやブラジルで開催(第3回-第5回)し、南米ラプラタ川流域の巨大ダム開発と関連する環境問題解決のための流域間の枠組づくりに長年携わってきました。(支流を含む)ラプラタ川はブラジル・アルゼンチン・パラグアイ・ウルグアイ・ボリビアの5カ国にまたがる国際河川で、三ヶ国の首都を流れ、世界でもっともダム開発が進んだ流域であると同時に、懸濁物質負荷量がもっとも多い河川の一つで、それが大西洋遠くにまで届くため、その環境影響の評価や、ダム開発後の流域環境の保全の枠組作りが重要でした。
もうひとつ山敷先生の代表的な研究フィールドである日本一の大きさを誇る琵琶湖。山敷先生は琵琶湖を学位論文での研究フィールドとして琵琶湖の流動解析モデルBiwa-3Dを開発し、地球温暖化により大気温が上昇した場合の湖水温への影響解析を行い、温暖化が進行した場合、表水層の厚さが著しく増加する可能性をモデルによる数値結果により示しました。

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     イタイプーダム PTIにて開催された第5回ラプラタ川流域ワークショップに集ったメンバー(2008年3月)



複合的社会問題の発掘・分析力

このたび3.11事故以来広域災害や福島第一原発事故関連の調査研究に関わってきた山敷先生が中心となって執筆した論文
Yosuke Yamashiki, Yuichi Onda, Hugh G. Smith, William H. Blake, Taeko Wakahara, Yasuhito Igarashi, Yuki Matsuura & Kazuya Yoshimura: Initial flux of sediment-associated radiocesium to the ocean from the largest river impacted by Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. Scientific Reports 4, Article number: 3714 16 January 2014


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2014年水文・水資源学会・論文賞

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受賞の様子
「福島第一原子力発電所の影響を受けた最大河川流域から海洋への粒子態放射性セシウムの初期フラックス」
が、初めてモンスーン地帯にもたらした大規模核汚染に関する研究という独創性の高さ、また,河川から海洋への放射性物質の再移動が生態系へ及ぼす影響を検討する上での貴重なデータの提供であるという学術的な価値の高さにより、2014年水文・水資源学会・論文賞を受賞しました。


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        川俣町山木屋地区の調査の様子


山敷先生は評価いただける論文の一つとなったことを嬉しく思いつつ、「2011年事故直後、毎週のように京都から福島に通い、レンタカーにて当時避難区域であった上流の川俣町山木屋地区から阿武隈川流域全体をまわったことは忘れません。しかし最も苦しかったのは、初めてフラックスを試算するために様々な観測データを数字に直してゆく作業でした。特に何らかの事情で生じた欠損データの評価が非常に重要となりました。」と、厳しい調査現場とデータ解析について語りました。
この研究成果は、数々の注目を浴び、
2014年1月16日 Scientific Reports 4 : 3714 doi: 10.1038/srep03714 (2014)
Nature Asia (Japan)注目の論文ページ
http://www.natureasia.com/ja-jp/srep/abstracts/52665
朝日新聞ディジタル (2014年1月17日)
http://digital.asahi.com/articles/ASG1J41R3G1JPLBJ001.html
ドイツZDF(第2ドイツテレビ=公共放送局)『フクシマのウソ』(2014年3月9日公開)
BBC News Web 2014年7月9日付記事 ”Drone helps Fukushima clean-up”
などに取り上げられました。





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