山敷庸亮 教授
地球は水の惑星とよばれ、太陽系の惑星で唯一表面(の3分の2)が液体の水で覆われています。また水は生命の源であり、地球上のすべての生命を維持するために欠くことのできない貴重な資源です。気候変動等の様々な環境変化や人類の経済活動・産業発展などにより、洪水や渇水、また水質悪化といった地球規模での水資源問題が大きな注目をあびています。
水循環プロセスを通じて水は大気・森林・土壌そして都市を循環し川から海に注ぎ、これらを浄化すると同時に栄養塩や汚染物質を下流に輸送し、河川流域から海洋を通じて地球規模で循環させます。総合生存学としてもこの水循環に焦点を当てた研究を行ってゆかねばなりません。
山敷先生は、前職のUNEP-IETC協力企画官、日本大学准教授時代から、国連環境計画UNEP・世界水アセスメント計画WWAP・国連教育文化機関国際水文プログラムUNESCO-IHPなどとともにラプラタ川流域ワークショップをアルゼンチンやブラジルで開催(第3回-第5回)し、南米ラプラタ川流域の巨大ダム開発と関連する環境問題解決のための流域間の枠組づくりに長年携わってきました。(支流を含む)ラプラタ川はブラジル・アルゼンチン・パラグアイ・ウルグアイ・ボリビアの5カ国にまたがる国際河川で、三ヶ国の首都を流れ、世界でもっともダム開発が進んだ流域であると同時に、懸濁物質負荷量がもっとも多い河川の一つで、それが大西洋遠くにまで届くため、その環境影響の評価や、ダム開発後の流域環境の保全の枠組作りが重要でした。
もうひとつ山敷先生の代表的な研究フィールドである日本一の大きさを誇る琵琶湖。山敷先生は琵琶湖を学位論文での研究フィールドとして琵琶湖の流動解析モデルBiwa-3Dを開発し、地球温暖化により大気温が上昇した場合の湖水温への影響解析を行い、温暖化が進行した場合、表水層の厚さが著しく増加する可能性をモデルによる数値結果により示しました。
イタイプーダム PTIにて開催された第5回ラプラタ川流域ワークショップに集ったメンバー(2008年3月)
このたび3.11事故以来広域災害や福島第一原発事故関連の調査研究に関わってきた山敷先生が中心となって執筆した論文
Yosuke Yamashiki, Yuichi Onda, Hugh G. Smith, William H. Blake, Taeko Wakahara, Yasuhito Igarashi, Yuki Matsuura & Kazuya Yoshimura: Initial flux of sediment-associated radiocesium to the ocean from the largest river impacted by Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. Scientific Reports 4, Article number: 3714 16 January 2014